バンコマイシンの初期投与法の検討

「緒言」バンコマイシン(VCM)は, MRSA感染症に対し効果的な薬剤として使用されている. 臨床現場でのVCMの初期投与法は, 1つには, 添付文書に記載されているように「通常, 成人にはVCMとして1日2gを1回0.5g6時間ごとまたは1回1g12時間ごとに分割して, それぞれ60分以上かけて点滴静注する」という方法1)と, 2つには, 腎機能が低下している場合には, Moelleringら2)が報告しているクレアチニンクリアランスから1日の投与量を算出するという方法で実施されている. しかしながら, これらの投与法では治療域の点滴終了1時間後の血中濃度が25-40μg/mLに到達せず,...

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Published in病院薬学 Vol. 25; no. 5; pp. 517 - 524
Main Authors 中村, 護, 小西, 敏夫, 船越, 幸代, 前田, 頼伸, 西園寺, 真二, 突合, 皐月, 仁井, 稚子, 正木, 史子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療薬学会 10.10.1999
日本病院薬学会
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ISSN0389-9098
2185-9477
DOI10.5649/jjphcs1975.25.517

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Summary:「緒言」バンコマイシン(VCM)は, MRSA感染症に対し効果的な薬剤として使用されている. 臨床現場でのVCMの初期投与法は, 1つには, 添付文書に記載されているように「通常, 成人にはVCMとして1日2gを1回0.5g6時間ごとまたは1回1g12時間ごとに分割して, それぞれ60分以上かけて点滴静注する」という方法1)と, 2つには, 腎機能が低下している場合には, Moelleringら2)が報告しているクレアチニンクリアランスから1日の投与量を算出するという方法で実施されている. しかしながら, これらの投与法では治療域の点滴終了1時間後の血中濃度が25-40μg/mLに到達せず, しかも投与前の血中濃度は10μg/mLを越えている例が多いため, 投与量や投与間隔を変更し有効濃度領域になるように努めているのが現状である3-6). そのため, 1999年3月の添付文書改訂1)で, 「高齢者には, 1回0.5g12時間ごとまたは1回1g24時間ごとに, それぞれ60分以上かけて点滴静注する」という内容の追加が行われた. しかし, VCMは年齢だけでなく腎機能も考慮する必要がある. MRSA感染症では速やかに有効血中濃度に達し, 短期間で治療を終了させることが, 耐性菌出現や副作用発現を防止する上で重要となる. 当院ではこれまで, 投与量が750mg以下では有効治療域に到達しない症例が多いことを経験している. そこで, Moelleringら2)が報告しているノモグラムを改良し, 初期投与量は1000mgに固定し, 投与間隔を調整するという方法で治療を実施した. その結果, ほとんどの症例でVCM点滴終了1時間後の血中濃度が25-40μg/mL, 投与前の血中濃度が10μg/mL以下で治療することが可能となったので, これらについて報告する. 対象と方法 1. 対象 中国労災病院に入院した平成7年1月から平成10年12月の4年間に, VCM治療を受けたMRSA感染者99例(男性69名, 女性30名, 平均年齢67.9±12.4歳, 33歳-88歳)を対象とした.
ISSN:0389-9098
2185-9477
DOI:10.5649/jjphcs1975.25.517