奄美大島における保全上重要な亜熱帯照葉樹林の指標候補としての大径木

奄美大島の亜熱帯照葉樹林において、大径木を指標として生物多様性保全上の重要性が高い森林域を見出す可能性を探った。奄美大島中部の金作原国有林において、1965年、1978年および1984年の空中写真で皆伐が認められる森林域(「皆伐域」)および少なくとも1965年以降は皆伐が認められない森林域(「非皆伐域」)を判別して調査区を設けた。各調査区において林冠木胸高直径および樹洞などのマイクロハビタット、フロラを記録した。林冠木の胸高直径は樹木あたりの樹洞数および着生植物種数に有意な正の効果を示した。非皆伐域では100m^2あたりの林冠層平均胸高直径および倒木数、着生植物種数がいずれも皆伐域に比べて有意...

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Published in保全生態学研究 Vol. 20; no. 2; pp. 147 - 157
Main Authors 松本, 斉, 大谷, 雅人, 鷲谷, いづみ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生態学会 2015
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Summary:奄美大島の亜熱帯照葉樹林において、大径木を指標として生物多様性保全上の重要性が高い森林域を見出す可能性を探った。奄美大島中部の金作原国有林において、1965年、1978年および1984年の空中写真で皆伐が認められる森林域(「皆伐域」)および少なくとも1965年以降は皆伐が認められない森林域(「非皆伐域」)を判別して調査区を設けた。各調査区において林冠木胸高直径および樹洞などのマイクロハビタット、フロラを記録した。林冠木の胸高直径は樹木あたりの樹洞数および着生植物種数に有意な正の効果を示した。非皆伐域では100m^2あたりの林冠層平均胸高直径および倒木数、着生植物種数がいずれも皆伐域に比べて有意に高かった。非皆伐域における100m^2あたりの林冠層平均胸高直径は樹洞数、倒木本数、および着生植物種数に対して一般化線形混合モデルにより有意な正の効果が認められた。林冠層平均胸高直径が40cmを超える森林域に特徴的な種や皆伐後の森林域で欠落する種は、シダ植物や耐陰性が高い種、湿潤環境を選好する種であった。本研究の結果により、大径木は長期間にわたり大規模な攪乱を免れマイクロハビタットに富む森林域や、自然性の高い森林フロラをもつ森林域を見いだす指標として有効なことが示唆された。
ISSN:1342-4327
2424-1431
DOI:10.18960/hozen.20.2_147