原子間力顕微鏡によるエナメル質表層下脱灰部表面の微細構造およびその表面性状

初期齲蝕形成エナメル質表面の脱灰・再石灰化現象を経時的に表面微細構造,結晶構造,表面化学組成および接触角の変化から解明することを目的として本研究を行った。AFM観察の結果,表層下脱灰エナメル質表面には,酸侵襲経路と考えられるエナメル小柱結晶間隙の拡大が認められた。また,4時間脱灰以降の表層下脱灰エナメル質表面には,健全エナメル質結晶とは異なる形状の再石灰化結晶が観察され,この結晶物質はbrushite結晶であると考察された。ESCA分析によるCaおよびPの相対濃度から,脱灰時間の経時的変化にともなって,Pの減少によるCa/P比の増加を認め,表層下脱灰エナメル質表面は,Pの欠乏状態にあることが明...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJOURNAL OF DENTAL HEALTH Vol. 46; no. 2; pp. 187 - 198
Main Authors 野村, 裕信, 上村, 参生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 1996
Japanese Society for Oral Health
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.46.2_187

Cover

More Information
Summary:初期齲蝕形成エナメル質表面の脱灰・再石灰化現象を経時的に表面微細構造,結晶構造,表面化学組成および接触角の変化から解明することを目的として本研究を行った。AFM観察の結果,表層下脱灰エナメル質表面には,酸侵襲経路と考えられるエナメル小柱結晶間隙の拡大が認められた。また,4時間脱灰以降の表層下脱灰エナメル質表面には,健全エナメル質結晶とは異なる形状の再石灰化結晶が観察され,この結晶物質はbrushite結晶であると考察された。ESCA分析によるCaおよびPの相対濃度から,脱灰時間の経時的変化にともなって,Pの減少によるCa/P比の増加を認め,表層下脱灰エナメル質表面は,Pの欠乏状態にあることが明らかとなった。接触角の測定結果から,表層下脱灰エナメル質表面は,健全エナメル質表面に比べて,親水性に傾くことが明らかとなった。以上のことから,初期齲蝕発生過程を想定した表層下脱灰エナメル質の表面微細構造およびその表面性状を明らかにするとともに,エナメル質表面で起こる脱灰・再石灰化現象を微細構造学的,化学的および物理化学的に解明することができた。
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.46.2_187