酸性ポリオール—ホウ酸錯体の化学とそのホウ素分析への応用

ホウ酸と酸性ポリオールであるクロモトロープ酸,タイロン及び2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸ナトリウムとの錯生成反応について主に11B NMRを用いて検討を行った.すべての錯生成系で2種類の錯体が生成し,錯生成平衡は溶液のpHに依存することが明らかになった.ホウ酸とポリオールの1 : 2錯体は酸性又は中性の溶液において生成し,1 : 1錯体はより高いpH条件下で生成した.錯生成反応の速度論的解析により,1 : 2錯生成の反応速度が1 : 1錯生成の反応速度に比べて著しく小さいこと,プロトン触媒が1 : 2錯生成に関与することが示唆された.これらの特性を利用して,クロモトロープ酸担持...

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Published in分析化学 Vol. 61; no. 3; pp. 177 - 184
Main Authors 邵, 超英, 宮崎, 義信, 松岡, 史郎, 竹原, 公, 藤森, 崇夫, 吉村, 和久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2012
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Summary:ホウ酸と酸性ポリオールであるクロモトロープ酸,タイロン及び2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸ナトリウムとの錯生成反応について主に11B NMRを用いて検討を行った.すべての錯生成系で2種類の錯体が生成し,錯生成平衡は溶液のpHに依存することが明らかになった.ホウ酸とポリオールの1 : 2錯体は酸性又は中性の溶液において生成し,1 : 1錯体はより高いpH条件下で生成した.錯生成反応の速度論的解析により,1 : 2錯生成の反応速度が1 : 1錯生成の反応速度に比べて著しく小さいこと,プロトン触媒が1 : 2錯生成に関与することが示唆された.これらの特性を利用して,クロモトロープ酸担持イオン交換カラムを用いる超微量ホウ素のオンライン錯生成による濃縮,分離定量法を開発した.カラム内のイオン交換体相が配位子高濃度の反応場を与えるために,低pH条件(pH 3)ではホウ酸がオンラインでの短時間の反応によりカラムに濃縮された.生成した錯体はpH 8の条件下で速度論的に安定であるため,pH 8における段階溶離により錯体をフリーのクロモトロープ酸から分離することができ,ホウ素の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)定量に用いることができた.導入した試料量を13.4 cm3にした時,検出限界(3σ)は0.05 μg dm−3に達した.この方法は高純度水や天然水などの微量ホウ素の定量だけではなく,鉄鋼中の微量ホウ素の流れ分析にも適用できた.また,ホウ酸─クロモトロープ酸及びホウ酸─タイロン錯体のサイクリックボルタンメトリー(CV)ピークを用いて,ホウ素の電気化学的な簡易分析法を開発し,海水の逆浸透膜処理水(RO水)中のホウ素の定量に応用した.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.61.177