肩関節可動域拡大を目的とした経皮的電気刺激療法(TENS)と関節可動域訓練(ROM-ex)の併用治療の試み

【目的】脳卒中後肩関節疼痛(Post stroke shoulder pain:以下PSSP)は多くの症例で認められる重要な合併症の一つで,麻痺側機能回復の遅延につながるだけでなく,日常生活動作や機能訓練における阻害因子となる.臨床では,疼痛管理を目的とした経皮的電気刺激療法(Transcutaneous electrical nerve stimulation:以下TENS)が安全で簡便な鎮痛方法として使用されている.疼痛緩和のメカニズムはゲートコントロール理論(Gate control theory:以下GCT)とTENSにより内因性オピオイド放出による影響が報告されている.濱出によると肩...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 18
Main Authors 中原, 寿志, 田上, 茂雄, 柚木, 直也, 大竹, 英次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_18

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Summary:【目的】脳卒中後肩関節疼痛(Post stroke shoulder pain:以下PSSP)は多くの症例で認められる重要な合併症の一つで,麻痺側機能回復の遅延につながるだけでなく,日常生活動作や機能訓練における阻害因子となる.臨床では,疼痛管理を目的とした経皮的電気刺激療法(Transcutaneous electrical nerve stimulation:以下TENS)が安全で簡便な鎮痛方法として使用されている.疼痛緩和のメカニズムはゲートコントロール理論(Gate control theory:以下GCT)とTENSにより内因性オピオイド放出による影響が報告されている.濱出によると肩,手関節の疼痛に対しTENSと関節可動域訓練(Range of motion exercise:以下ROM-ex)の同時治療にて疼痛が軽減したと報告しており,TENSと十分なROM-exは,有効な併用治療となり得ると考える.今回,PSSPにより関節可動域(Range of motion:以下ROM)の制限を認めた症例に対し,TENSとROM-exの併用治療の効果を検証した.【方法】対象は70歳代女性,右利き,脳梗塞により右片麻痺を呈した症例.発症後25日時点での上肢機能評価としてBrunnstrom Recovery Stage上肢Ⅱ,手指Ⅱで随意的な運動は困難な状態.Fugl-Meyer Asessmentの上肢項目6点.肩関節に100mm Visual Analog Scale(以下100mmVAS)にて73mmの疼痛を認め,関節可動域テスト(Range of motion test:以下ROM-T)は85°と制限を認めた.介入方法としてはTENS非介入2週間(非介入期),TENS介入2週間(介入期)とし比較を行う.介入期では低周波治療器ESPURGE(伊藤超短波製)を使用し,周波数1~250Hzの変調モード、パルス幅100?s、電極貼付位置をC5/6/7/8/Th1のデルマトーム上に設置し,訓練前に20分間TENSを実施し,訓練前後に100mmVAS,ROM-Tを行った.統計学的解析は非介入期と介入期の前後での比較を対応のあるt検定を用い,統計解析はRcommander を使用.有意水準は5%未満とした.【結果】100mmVAS(訓練前→訓練後)では非介入期:43.0±20.59mm→40.4±17.81mmと有意差は見られなかった.介入期:49.66±19.31mm→13.44±4.53mm(p<0.05)と有意差が見られた.ROM-T(訓練前→訓練後)では,非介入期:87.0±2.22°→91.5±2.42°(p<0.05)介入期:93.3±5.6°→112.8±6.67°(p<0.05)であった.【考察】今回PSSPに対してTENSを実施し,介入期に疼痛緩和が図られた.徳田らは設定周波数を1~250Hzと変調したTENSを実施することで,周波数に依存して異なる多種の内因性オピオイドが放出されると報告している.本症例においても,これらのメカニズムが関与し,疼痛緩和が図られたと推測できる.また, ROM-Tにおいても介入期に大幅な改善を認める結果となった.ROM-exは,ROMの維持,改善を目的とした運動療法であり,関節運動が髄液や滑膜,関節軟骨に影響を及ぼし,ROM改善に関与すると言われている.そこでTENSにて疼痛緩和を図り、可動域を確保した中で,ROM-exを行えたことが,ROM改善に影響したと考えられる.よってTENS単独介入もしくはROM-ex単独介入を実施するだけでなく,TENSとROM-exの併用した介入を行うことで相乗効果が図られ,脳卒中後の麻痺,疼痛を呈した症例における介入方法として有効ではないかと考察する.【まとめ】PSSPに対し、ROM拡大を目的としたTENSとROM-exの併用療法を試みた.TENSによる介入期では疼痛,ROMに大幅な改善が見られる結果となり,PSSPに対する作業療法に積極的に導入することで,より安全に効果のあるリハビリテーションを提供していく一助となりうると考える.【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、対象者に十分な説明を行い、同意が得られたのちに評価および介入を行った.利益相反に関する開示事項は。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_18