コロナ禍における面会制限は脳死下臓器提供に影響を与えたか?(岡山大学病院高度救命救急センターの経験から)

【背景】本邦ではコロナ禍で臓器提供数が減少した。原因として、厳重な感染管理、病床逼迫に加え、患者家族との信頼関係構築に不可欠な、家族の面会や来院機会の減少が想定される。当院では面会制限下4例の脳死下臓器提供を経験した。今回、コロナ禍での臓器提供過程で我々が直面した問題を明らかにするため調査する。【方法】2016年1月から2021年5月までの脳死下臓器提供例について診療録を用い、後方視的にデータを抽出した。検討項目は年齢、性別、入院から脳死とされうる状態の確認まで、選択肢提示まで、各日数、病状説明回数、面会回数とした。病状説明、面会回数は入室日数で除して比較を行った。また、アンケートを用い医療者...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 56; no. Supplement; p. s518
Main Authors 山本, 浩継, 藤崎, 宣友, 小田, 裕太, 小崎, 吉訓, 青景, 聡之, 内藤, 宏道, 中尾, 篤典, 中村, 俊介, 野島, 剛, 塚原, 紘平, 山田, 太平, 小原, 隆史, 上田, 浩平, 萩原, 万瀧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2021
The Japan Society for Transplantation
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Summary:【背景】本邦ではコロナ禍で臓器提供数が減少した。原因として、厳重な感染管理、病床逼迫に加え、患者家族との信頼関係構築に不可欠な、家族の面会や来院機会の減少が想定される。当院では面会制限下4例の脳死下臓器提供を経験した。今回、コロナ禍での臓器提供過程で我々が直面した問題を明らかにするため調査する。【方法】2016年1月から2021年5月までの脳死下臓器提供例について診療録を用い、後方視的にデータを抽出した。検討項目は年齢、性別、入院から脳死とされうる状態の確認まで、選択肢提示まで、各日数、病状説明回数、面会回数とした。病状説明、面会回数は入室日数で除して比較を行った。また、アンケートを用い医療者の心理的、業務的負担を調査した。【結果】面会制限前7症例と、2020年8月以降の面会制限後4症例を対象とした。年齢は中央値29歳(5-67)。脳死とされうる状態の確認までの日数と、選択肢提示までの日数は、面会制限前後で差を認めなかった(いずれも中央値4日)。一方、病状説明/入院日数は面会制限無:有で、0.44:0.19(p<0.05)、面会回数/入院時間は、0.88:0.20(p<0.05)と有意に減少していた。医療者の心理的、業務的負担は病床逼迫、面会制限により増大した。【結論】コロナ禍で病状説明と面会の回数は減少した。医療者の業務量と心理的負担は増大したが、コロナ禍でも病状説明や選択肢提示を通常通り行うことで、臓器提供を継続できた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.56.Supplement_s518