開花特性と遺伝構造が示すササ類(オモエザサ)の非一回繁殖性(<特集>Bambooはなぜ一斉開花するのか?~熱帯から温帯へのクローナル特性と開花更新習性の進化を探る~)

ササ類は開花・結実の豊凶がきわめて明瞭であり、加えて生涯で一度のみ繁殖する一回繁殖型植物と考えられてきた。一方、ササ類は個体群の遺伝構造の把握が困難であったため、これまで一回繁殖性について検証されることはなかった。しかしササ類の特異的な繁殖特性を解明するにはまず一回繁殖性の検証が不可欠である。そこで、オモエザサ個体群において遺伝構造を調べると共に、4年間の開花パターンの調査を行い、一回繁殖性の検証を行った。その結果、開花稈は全て同一ジェネットに属し、ジェネットの占有面積は3ha以上に及んだ。しかし、同一ジェネット内の稈が全て開花したのではなく、大別すると、全ての稈が開花していない範囲、開花稈と...

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Published in日本生態学会誌 Vol. 60; no. 1; pp. 73 - 79
Main Authors 宮崎, 祐子, 大西, 尚樹, 日野, 貴文, 日浦, 勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生態学会 2010
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Summary:ササ類は開花・結実の豊凶がきわめて明瞭であり、加えて生涯で一度のみ繁殖する一回繁殖型植物と考えられてきた。一方、ササ類は個体群の遺伝構造の把握が困難であったため、これまで一回繁殖性について検証されることはなかった。しかしササ類の特異的な繁殖特性を解明するにはまず一回繁殖性の検証が不可欠である。そこで、オモエザサ個体群において遺伝構造を調べると共に、4年間の開花パターンの調査を行い、一回繁殖性の検証を行った。その結果、開花稈は全て同一ジェネットに属し、ジェネットの占有面積は3ha以上に及んだ。しかし、同一ジェネット内の稈が全て開花したのではなく、大別すると、全ての稈が開花していない範囲、開花稈と非開花稈が混在している範囲、全ての稈が開花している範囲がそれぞれ、同一ジェネット内に同時に存在した。全ての稈が開花した範囲のうち、開花後に全ての地上部が枯死した範囲もあったが、翌年以降も稈が生残する範囲もあった。開花後に地上部が枯死した範囲の地下茎からは、翌年以降に新しい稈や花序が再生する現象がみられた。開花が起こる範囲は年毎に変化したが、同一ジェネットに属していても4年間でまだ一度も開花していない範囲も存在した。また、ラメット間の生理的統合を調べるため、炭素安定同位体(13C)を用いてトレース実験を行った結果、非開花稈から地下茎で繋がった開花稈へ13Cが転流していた。これらのことから、研究対象としたオモエザサは一斉に開花はするものの、必ずしも一回繁殖型の生活史を有していないことが分かった。
ISSN:0021-5007
2424-127X
DOI:10.18960/seitai.60.1_73