東北地方太平洋沖地震後の緊急調査掘削(IODP第343次航海:J-FAST)の成果

海洋では初となる緊急掘削調査(地震直後に科学目的のために行われる掘削調査)が2011年東北地方太平洋沖地震の後に日本海溝で実施され,巨大地震に伴って生じた巨大津波のメカニズムについて多くの知見が得られた.中でも,1)断層帯が薄く(5m)弱かった(低速すべり条件と高速すべり条件でそれぞれ摩擦係数0.2-0.26と0.08-0.1)こと,2)この低摩擦の性質は,断層帯に粘土鉱物の一種であるスメクタイトが多く含まれることとThermal pressurization と呼ばれる摩擦熱による間隙水圧上昇が原因であること,3)地震前と地震後で応力環境が圧縮から伸張に激変していること,などが主要成果である...

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Published inChishitsugaku zasshi Vol. 124; no. 1; pp. 67 - 76
Main Authors 山田, 泰広, Mori, Jim, 氏家, 恒太郎, 林, 為人, 小平, 秀一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Tokyo 一般社団法人 日本地質学会 15.01.2018
Japan Science and Technology Agency
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Summary:海洋では初となる緊急掘削調査(地震直後に科学目的のために行われる掘削調査)が2011年東北地方太平洋沖地震の後に日本海溝で実施され,巨大地震に伴って生じた巨大津波のメカニズムについて多くの知見が得られた.中でも,1)断層帯が薄く(5m)弱かった(低速すべり条件と高速すべり条件でそれぞれ摩擦係数0.2-0.26と0.08-0.1)こと,2)この低摩擦の性質は,断層帯に粘土鉱物の一種であるスメクタイトが多く含まれることとThermal pressurization と呼ばれる摩擦熱による間隙水圧上昇が原因であること,3)地震前と地震後で応力環境が圧縮から伸張に激変していること,などが主要成果である.残された課題として,1)海底から基盤岩までの連続した物性や,2)側方へのすべり不均一性を決定する要素を把握・理解することが挙げられる.これらを解決するためには,近い将来に再び科学掘削が実施されることが望まれる.
ISSN:0016-7630
1349-9963
DOI:10.5575/geosoc.2017.0080