膵島移植の成績向上に向けて−自家膵島移植の検討から見えてきたもの

本邦でも1型糖尿病に対する同種膵島移植の安全性・有効性が臨床試験で確認されたが、膵島移植がより広く行われるには単独ドナーからのインスリン離脱を可能にするなど、有効性のさらなる改善が必要である。膵島グラフトの長期生着・細胞活性の維持を阻害する要因として1) 免疫抑制剤による細胞毒性、2) 膵島分離に伴うストレス、3) 非自己組織片に対する免疫応答、4) 抗インスリン抗体等による免疫応答、など様々な因子が関連しているとされる。一方、慢性膵炎に対する膵全摘・自家膵島移植(TP-IAT)は、拒絶や自己免疫の影響を受けないことから免疫抑制剤使用の必要がなく、膵炎や膵島分離に伴うストレスと膵島の生着の関係...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 56; no. Supplement; p. s478
Main Authors 南野, 佳英, 浦出, 剛史, 津川, 大介, 後藤, 直大, 浅利, 貞毅, 小松, 昇平, 木戸, 正浩, 石田, 潤, 山下, 博成, 蔵満, 薫, 外山, 博近, 福本, 巧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2021
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.56.Supplement_s478

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Summary:本邦でも1型糖尿病に対する同種膵島移植の安全性・有効性が臨床試験で確認されたが、膵島移植がより広く行われるには単独ドナーからのインスリン離脱を可能にするなど、有効性のさらなる改善が必要である。膵島グラフトの長期生着・細胞活性の維持を阻害する要因として1) 免疫抑制剤による細胞毒性、2) 膵島分離に伴うストレス、3) 非自己組織片に対する免疫応答、4) 抗インスリン抗体等による免疫応答、など様々な因子が関連しているとされる。一方、慢性膵炎に対する膵全摘・自家膵島移植(TP-IAT)は、拒絶や自己免疫の影響を受けないことから免疫抑制剤使用の必要がなく、膵炎や膵島分離に伴うストレスと膵島の生着の関係を見る良いモデルである。以前TP-IAT患者の大規模な後方視検討において、術前のBMI、空腹時血糖・Cペプチド値、移植膵島量は術後のインスリン離脱率と関連するものの、これらの値を複合的に用いてもレシピエントの術後インスリン離脱の正診率は約70%にとどまることを示した(Am J Transplant. DOI: 10.1111/ajt.16573.)。前述の様々な阻害要因によって膵島の多くが移植後死滅している可能性を示唆していると考えられる。基礎研究レベルでは薬剤の併用により膵島移植における酸化ストレスを軽減するという報告があるが、臨床研究では目立った成果を上げるに至っていない。今後膵島移植の成績の向上に向けて、移植膵島の生着率や細胞活性の維持の改善が肝要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.56.Supplement_s478