原子スペクトル分析におけるヒ素化合物の化学形態に依存する分析感度差

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS),ICP発光分光分析法(ICP-OES),黒鉛炉原子吸光分析法(GFAAS)などの原子スペクトル分析法でヒ素化合物の測定を行う場合,その化学形態によって測定感度に差が生じる.そのため,試料中に複数の化学形態でヒ素化合物が存在する場合には精確な総ヒ素量分析が困難となる可能性がある.化学形態に依存する分析感度差とその原因を考察するため,装置原理が異なるICP-MS,ICP-OES,GFAASなどを用いて,各分析法における分析感度の形態依存性を検討した.分析における感度差の議論を厳密に行うため,いずれの分析法においても同一の元溶液を各分析法の定量感度まで適宜...

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Published in分析化学 Vol. 58; no. 4; pp. 185 - 195
Main Authors 千葉, 光一, 成川, 知弘, 黒岩, 貴芳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2009
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.58.185

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Summary:誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS),ICP発光分光分析法(ICP-OES),黒鉛炉原子吸光分析法(GFAAS)などの原子スペクトル分析法でヒ素化合物の測定を行う場合,その化学形態によって測定感度に差が生じる.そのため,試料中に複数の化学形態でヒ素化合物が存在する場合には精確な総ヒ素量分析が困難となる可能性がある.化学形態に依存する分析感度差とその原因を考察するため,装置原理が異なるICP-MS,ICP-OES,GFAASなどを用いて,各分析法における分析感度の形態依存性を検討した.分析における感度差の議論を厳密に行うため,いずれの分析法においても同一の元溶液を各分析法の定量感度まで適宜希釈して測定した.As(III)溶液にはJapan Calibration Service System(JCSS)ヒ素標準液を用い,As(V)溶液にはJCSSヒ素標準液にHNO3を添加して加熱し,As(V)に酸化して調製した.アルセノベタインにはInstitute for Reference Materials and Measurements(IRMM)が頒布している認証標準物質BCR CRM 626アルセノベタイン水溶液を用いた.分析時間に依存する感度変動の要因を取り除くため,ICP-MS及びICP-OESでは内標準元素を添加し,ヒ素と併せて測定した.その結果,同一As量換算のシグナル強度を比較した場合,GFAASでは無機ヒ素化合物とアルセノベタイン,ICP-MS及びICP-OESではAs(III),As(V)及びアルセノベタインにおいて,それぞれに分析感度に差が認められた.なかでも,ICPプラズマ分析法においてAs(III)とAs(V)に分析感度差が生じる原因としては,プラズマ中で起こるヒ素の水素付加分子の生成率がAs(III)とAs(V)では異なるためであると考察された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.58.185