非破壊オンサイト分析からみた北東アジアで流通したガラス玉の化学組成と物質交流

北東アジア(本研究では,ロシアの沿海地方,アムール川流域,サハリン島,千島列島などを示す)では,さまざまな物質交流が行われていたとされ,ガラス玉もその一つであった.ガラス玉はその化学組成から生産地域や作られた大まかな時期を知ることができることから,本研究では物質交流の一端を明らかにするため,これらの地域で発見されたガラス玉に注目した.著者らは文化財分析に特化した可搬型蛍光X線分析装置をこれらの地域に持ち込み,現地でガラス玉の化学組成を調査した.化学組成に基づいて四つの組成タイプに分類でき,複数のタイプのガラス玉が北東アジアに流通していたこと,組成タイプに基づく当該地域の組成的変遷を明らかにした...

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Published in分析化学 Vol. 73; no. 12; pp. 691 - 704
Main Authors 村串, まどか, 中村, 和之, 中井, 泉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.12.2024
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Summary:北東アジア(本研究では,ロシアの沿海地方,アムール川流域,サハリン島,千島列島などを示す)では,さまざまな物質交流が行われていたとされ,ガラス玉もその一つであった.ガラス玉はその化学組成から生産地域や作られた大まかな時期を知ることができることから,本研究では物質交流の一端を明らかにするため,これらの地域で発見されたガラス玉に注目した.著者らは文化財分析に特化した可搬型蛍光X線分析装置をこれらの地域に持ち込み,現地でガラス玉の化学組成を調査した.化学組成に基づいて四つの組成タイプに分類でき,複数のタイプのガラス玉が北東アジアに流通していたこと,組成タイプに基づく当該地域の組成的変遷を明らかにした.加えて,本研究の調査によって金赤ガラスを発見し,当時,金赤ガラスの生産技術を有していた中国から北東アジア各地へガラス玉が伝播した可能性を科学的に立証した.以上,本研究では非破壊オンサイト分析によって,ガラス玉の分析を通じて北東アジアの物質交流の一端を明らかにすることができた.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.73.691