当院における生体ドナーの術後重症合併症の検討
[背景と目的]生体肝移植においてはドナーの安全性が最優先されるが,ドナーの術後合併症は少なからず経験される.今回われわれは熊本大学における生体肝移植ドナーの術後合併症,特にClavien-Dindo分類gradeⅢa以上の重症合併症に関して検討した.[対象]1998年12月から2017年3月までに,当院でグラフト採取術を施行した生体肝移植ドナー470例を後方視的に検討した.[結果]ドナーの術後合併症は延べ167件認めた.重症度の内訳は,gradeⅠ(n=34),gradeⅡ(n=84),gradeⅢa/b(n=33/9),分類不能(n=8)であった.GradeⅢa以上の重症合併症の疾患内訳は,...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 56; no. Supplement; p. s70 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2021
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.56.Supplement_s70 |
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Summary: | [背景と目的]生体肝移植においてはドナーの安全性が最優先されるが,ドナーの術後合併症は少なからず経験される.今回われわれは熊本大学における生体肝移植ドナーの術後合併症,特にClavien-Dindo分類gradeⅢa以上の重症合併症に関して検討した.[対象]1998年12月から2017年3月までに,当院でグラフト採取術を施行した生体肝移植ドナー470例を後方視的に検討した.[結果]ドナーの術後合併症は延べ167件認めた.重症度の内訳は,gradeⅠ(n=34),gradeⅡ(n=84),gradeⅢa/b(n=33/9),分類不能(n=8)であった.GradeⅢa以上の重症合併症の疾患内訳は,胆汁漏が最も多く(n=21),創感染(n=7),消化管通過障害(n=4),腹壁瘢痕ヘルニア(n=3)が続いた.GradeⅢa以上の重症胆汁漏に対する有意なリスクファクターは認めなかった.ただし,重症胆汁漏症例においては,右葉系グラフト採取症例(n=8)は全例ドレーン管理で改善したが,左葉系グラフト採取症例(n=13)では4例でENBD留置などの内視鏡的処置を,2例で再手術(胆管単純閉鎖術,胆管空腸吻合術)を要した.[まとめ] GradeⅢa以上の生体ドナー術後重症合併症は胆汁漏が最も多く,特に左葉系グラフト採取症例において,再手術や内視鏡的処置が必要な症例を認めた. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.56.Supplement_s70 |