イギリスにおける大学補助金委員会(UGC)創設過程の分析 : 教育院と大蔵省の管轄権をめぐる交渉に着目して

本稿は、1919年大学補助金委員会(UGC)創設過程を分析し、UGCが「大学の自治」を保護する理念的源流とするこれまでの通説の妥当性を批判的に検証することを課題とする。具体的には、UGC創設過程において最も重要な意味を持っていた1918年12月〜1919年5月の6ヶ月間にわたる大蔵省と教育院の管轄権をめぐる交渉に関する歴史史料にあたり、通説に対する最も有力な対抗仮説であるAshby and Anderson(1974)の議論をUGC創設過程全体のなかに位置づけ直すことによって、Berdahl(1959)によって確立されたUGCの意義、すなわち、大学補助金交付機関が教育を直接所管しない官庁である...

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Published in教育学研究 Vol. 75; no. 3; pp. 289 - 298
Main Author 山崎, 智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本教育学会 2008
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ISSN0387-3161
2187-5278
DOI10.11555/kyoiku.75.3_289

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Summary:本稿は、1919年大学補助金委員会(UGC)創設過程を分析し、UGCが「大学の自治」を保護する理念的源流とするこれまでの通説の妥当性を批判的に検証することを課題とする。具体的には、UGC創設過程において最も重要な意味を持っていた1918年12月〜1919年5月の6ヶ月間にわたる大蔵省と教育院の管轄権をめぐる交渉に関する歴史史料にあたり、通説に対する最も有力な対抗仮説であるAshby and Anderson(1974)の議論をUGC創設過程全体のなかに位置づけ直すことによって、Berdahl(1959)によって確立されたUGCの意義、すなわち、大学補助金交付機関が教育を直接所管しない官庁である大蔵省の下に設置されたことによって大学自治の理念の制度的保障になったとする通説を批判的に再検討し、UGCが大蔵省管轄とされたことに「大学の自治」保護の意図はなかったことを明らかにしていく。
ISSN:0387-3161
2187-5278
DOI:10.11555/kyoiku.75.3_289