母子世帯の所得変動と職業移動 : 地方自治体の児童扶養手当受給資格者データから

母子世帯への社会政策は,児童扶養手当による所得保障を重視する政策から,就労による自立を強調する政策へ転換した。児童扶養手当は離婚後等の激変期に対応するものとされ,手当の支給開始から5年で手当を減額する規定が2002年に導入された。果たして5年で就労収入は増加するのか,地方自治体の児童扶養手当受給資格者データをもとに,所得変動と職業移動につき検証した。その結果受給資格者の所得水準は低位であり,生活保護の最低生活費に満たない世帯が8割である。所得変動は5〜6割が固定的であり,課税所得がない階層での固定化・再生産の強さは近年高まっていた。5年間で所得の上昇が見込まれる層は限られ,所得が下降する比率は...

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Published in社会政策 Vol. 4; no. 1; pp. 97 - 110
Main Authors 湯澤, 直美, 石田, 浩, 藤原, 千沙
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社会政策学会 2012
Japan Association for Social Policy Studies
Subjects
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ISSN1883-1850
2433-2984
DOI10.24533/spls.4.1_97

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Summary:母子世帯への社会政策は,児童扶養手当による所得保障を重視する政策から,就労による自立を強調する政策へ転換した。児童扶養手当は離婚後等の激変期に対応するものとされ,手当の支給開始から5年で手当を減額する規定が2002年に導入された。果たして5年で就労収入は増加するのか,地方自治体の児童扶養手当受給資格者データをもとに,所得変動と職業移動につき検証した。その結果受給資格者の所得水準は低位であり,生活保護の最低生活費に満たない世帯が8割である。所得変動は5〜6割が固定的であり,課税所得がない階層での固定化・再生産の強さは近年高まっていた。5年間で所得の上昇が見込まれる層は限られ,所得が下降する比率はより低位な階層のほうが高かった。経過年数のみで手当支給の可否を判断する行政措置は,貧困のさらなる固定化を強める危険性が高く,再検討が必要である。
ISSN:1883-1850
2433-2984
DOI:10.24533/spls.4.1_97