放射光マイクロビーム蛍光X線分析とX線吸収微細構造解析を用いたイネのカドミウムの蓄積機構に関する研究

イネにおけるCdの蓄積機構に関する新しい知見を得ることを目的として,植物体組織を非破壊で2次元多元素同時分析が可能な放射光マイクロビーム蛍光X線(SR-μ-XRF)分析とX線吸収微細構造(XAFS)解析を応用した.その結果,Cdを添加して栽培した二品種のイネ(日本晴,密陽23号)について,茎におけるCd及び植物必須元素の蓄積部位と,各器官(根,茎,葉)に蓄積されたCd化学形態が明らかになった.定量結果から,地下部では密陽23号より日本晴のCdの濃度が高いのに対し,地上部では二品種とも同程度のCdの濃度であった.またCdは維管束に多く分布し,品種間差は見られなかった.Cdの化学形態に関しては,根...

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Published in分析化学 Vol. 59; no. 6; pp. 463 - 475
Main Authors 高田, 沙織, 保倉, 明子, 竹久, 妃奈子, 中井, 泉, 阿部, 知子, 林, 依子, 寺田, 靖子, 山岡, 和希子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2010
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.59.463

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Summary:イネにおけるCdの蓄積機構に関する新しい知見を得ることを目的として,植物体組織を非破壊で2次元多元素同時分析が可能な放射光マイクロビーム蛍光X線(SR-μ-XRF)分析とX線吸収微細構造(XAFS)解析を応用した.その結果,Cdを添加して栽培した二品種のイネ(日本晴,密陽23号)について,茎におけるCd及び植物必須元素の蓄積部位と,各器官(根,茎,葉)に蓄積されたCd化学形態が明らかになった.定量結果から,地下部では密陽23号より日本晴のCdの濃度が高いのに対し,地上部では二品種とも同程度のCdの濃度であった.またCdは維管束に多く分布し,品種間差は見られなかった.Cdの化学形態に関しては,根ではCd-Sの形態で存在し,品種間差は見られなかった.一方,日本晴の茎では,添加期間が長くなるにつれてCd-Sの割合が1.5倍になっているのに対し,密陽23号におけるCd-Sの割合は大きく変化しなかった.また,日本晴の葉では添加期間が長くなるにつれてCd-Sの割合が減少するのに対し,密陽23号ではCd-Sの割合が増加していた.このことから,地上部へ輸送する際の化学形態の差がCdの蓄積挙動の違いに影響を与えている可能性が示唆された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.59.463