青森県津軽平野を対象とした生育水と精米の軽元素安定同位体比の相関性

近年社会問題化しているコメの産地偽装問題に対し,科学的根拠に基づいた判別技術の確立が求められており,そのためにはコメと生育水の軽元素安定同位体比の相関性を確認する必要がある.本研究は,青森県津軽平野を対象に生育水の酸素・水素安定同位体比及び炭素安定同位体比の空間的分布を明らかにし,その上でコメの安定同位体比との相関性を検討した.津軽平野の中央部では平野縁辺部と比較して生育水の酸素・水素安定同位体比が高い傾向にある.δダイアグラム上における天水線の傾きは4.95であり,蒸発散により平野中央部では同位体比がシフトしている可能性を示している.コメの酸素安定同位体比は生育水と有意な相関を持ち,酸素安定...

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Published in分析化学 Vol. 60; no. 7; pp. 563 - 570
Main Authors 相川, 良雄, 中下, 留美子, 富山, 眞吾, 鈴木, 彌生子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2011
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Summary:近年社会問題化しているコメの産地偽装問題に対し,科学的根拠に基づいた判別技術の確立が求められており,そのためにはコメと生育水の軽元素安定同位体比の相関性を確認する必要がある.本研究は,青森県津軽平野を対象に生育水の酸素・水素安定同位体比及び炭素安定同位体比の空間的分布を明らかにし,その上でコメの安定同位体比との相関性を検討した.津軽平野の中央部では平野縁辺部と比較して生育水の酸素・水素安定同位体比が高い傾向にある.δダイアグラム上における天水線の傾きは4.95であり,蒸発散により平野中央部では同位体比がシフトしている可能性を示している.コメの酸素安定同位体比は生育水と有意な相関を持ち,酸素安定同位体比によるコメの産地判別法の可能性が示唆された.生育水の炭素安定同位体比はpHと相関関係にあり,無機炭酸の化学種の存在比を反映している可能性がある.コメの炭素安定同位体比は生育水との相関が認められず,大気中CO2を起源の大部分とし,土壌の水分条件など水利用環境の違いを反映した同位体比を示しているものと考えられる.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.60.563