簡便迅速な土壌中の可給態肥料成分推計のための波長分散型XRFの応用

波長分散型蛍光X線分析法(WDXRF)を用いて,土壌中のP,K,Mg,Caを短時間で計測する方法を検討し,さらに単一圃場(ほじょう)の土壌中可給態肥料成分の推計に応用した.土壌試料からペレットを準備し,主要元素のみの測定結果にファンダメンタル・パラメータ法を適用することで,1試料あたり9分程度で高精度な定量ができた.約10 haの圃場から春に99個,秋に51個の土壌試料を採取し,WDXRFによるP,K,Mg,Caの定量結果を,従来法による可給態肥料成分分析の結果と比較したところ,P,K,Mgが両者で強い正の相関を,Caは弱い負の相関を示すことがわかった.得られた回帰直線とWDXRFの定量結果か...

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Published in分析化学 Vol. 69; no. 12; pp. 685 - 692
Main Authors 谷, 友里江, 山口, 裕太, 横田, 晴飛, 山田, 洋文, 大津, 直史, 宇都, 正幸
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.12.2020
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Summary:波長分散型蛍光X線分析法(WDXRF)を用いて,土壌中のP,K,Mg,Caを短時間で計測する方法を検討し,さらに単一圃場(ほじょう)の土壌中可給態肥料成分の推計に応用した.土壌試料からペレットを準備し,主要元素のみの測定結果にファンダメンタル・パラメータ法を適用することで,1試料あたり9分程度で高精度な定量ができた.約10 haの圃場から春に99個,秋に51個の土壌試料を採取し,WDXRFによるP,K,Mg,Caの定量結果を,従来法による可給態肥料成分分析の結果と比較したところ,P,K,Mgが両者で強い正の相関を,Caは弱い負の相関を示すことがわかった.得られた回帰直線とWDXRFの定量結果から可給態肥料成分を推計すると,推計値と実測値との誤差が±25% 以内に入る試料は,四つの成分ともに全体の78% から96% の範囲であることがわかった.すなわち従来の対角線採土法による肥料成分濃度の決定と比べて,WDXRFを利用することによって迅速で簡便に肥料成分の分布図を作成でき,平面分解能の改善を達成できることがわかった.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.69.685