塩酸セフェピムのラット及びイヌ静脈内持続投与並びにラット皮下投与による単回投与毒性試験

新規注射用セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (以後, CFPMと略) の安全性評価の一環として, 雌雄Crj: CD (SD) ラットを用いて500, 1,000, 2,000mg/kgの3用量で静脈内持続投与及び皮下投与による単回投与毒性試験を, 又, 5~6ヵ月齢のビーグル犬を用いて1,000, 2,000mg/kgの2用量で静脈内持続投与による単回投与毒性試験を実施し, その毒性を検討した。なお, 各試験とも生理食塩液及びCFPM製剤中にpH調整剤として含まれているL-アルギニンの投与群を設定した。結果と結論は以下のとおりである。 1. ラットへの静脈内持続投与では, 2,000mg/k...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 45; no. 6; pp. 612 - 619
Main Authors 門田, 利人, 近藤, 博志, 近沢, 弘隆, 黒柳, 幸司, 石川, 克己, 河野, 茂生, 坂倉, 佳代, 高橋, 紀光, 舟橋, 紀男, 清水, 憲次, 秋江, 靖樹, 石塚, 進, 飯高, 健, 正木, 文夫, 仲澤, 政雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 1992
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:新規注射用セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (以後, CFPMと略) の安全性評価の一環として, 雌雄Crj: CD (SD) ラットを用いて500, 1,000, 2,000mg/kgの3用量で静脈内持続投与及び皮下投与による単回投与毒性試験を, 又, 5~6ヵ月齢のビーグル犬を用いて1,000, 2,000mg/kgの2用量で静脈内持続投与による単回投与毒性試験を実施し, その毒性を検討した。なお, 各試験とも生理食塩液及びCFPM製剤中にpH調整剤として含まれているL-アルギニンの投与群を設定した。結果と結論は以下のとおりである。 1. ラットへの静脈内持続投与では, 2,000mg/kg群で軽度な自発運動の抑制が認あられ, 本所見はL-アルギニン投与群の雄1例でもみられた。又, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群並びにL-アルギニン投与群で軽度から重篤な投与部位の炎症性変化 (尾の脱落を含む) がみられた。体重は投与後順調に増加し, 観察期間中の平均体重に各用量群と生理食塩液投与群の間で差は認められなかった。 2. ラットへの皮下投与では, 2,000mg/kg群の雄で軽度な自発運動の抑制が認められた。又, 500, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群で軽度から中等度な投与部位の炎症性変化 (硬化, 脱毛, 痂皮形成, 壊死) がみられた。観察期間後半に2,000mg/kg群の雄で生理食塩液投与群と比較して平均体重のわずかな減少がみられたが, その他の用量群では差異は認められなかった。 3. ラットを用いた試験のいずれの投与経路においても, 観察期間中に死亡例はなかった。2週間観察期間終了後の剖検において, 投与部位の炎症性変化以外に本薬投与に起因する他の異常所見は認められなかった。 4. イヌへの静脈内持続投与では, 1,000mg/kg及び2,000mg/kg群並びにL-アルギニン投与群で投与中から嘔吐, 潮紅, 顔面浮腫, 活動性低下がみられた。更に, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群で頻呼吸, 腹臥, よろめき歩行, 持続性排尿, 刺激に対する反応性の低下, 口腔粘膜の退色, 流誕等が認められた。これらの症状はいずれも一過性であり, L一アルギニン投与群では投与終了後15分から1時間以内に, CFPM群では6時間以内に消失し, CFPM投与群で回復が遅れたが, 1,000mg/kgと2,000mg/kg群の問では差異は認められなかった。体重変動摂餌量, 病理学的検査では, 本薬投与に起因する異常所見は認められなかった。 以上のように, ラットへのCFPMの静脈内持続投与による単回投与毒性は皮下投与によるそれと類似して弱く, いずれの投与経路においても致死量は2,000mg/kg以上と考えられた。イヌへの静脈内持続投与においても, 2,000mg/kgで特に重篤な毒性作用はみられず, 致死量は2,000mg/kg以上と考えられた。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.45.612