呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について(2002年)

2002年10月-2003年9月の間に全国16施設において, 下気道感染症患者476例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 原因菌と推定された細菌584株のうち578株について薬剤感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus77株, Streptococcus pneumoniae103株, Haemophilus influenzae95株, 非ムコイド型Pseudomonas aeruginosa61株, ムコイド型P. aeruginosa23株, Kle...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 57; no. 3; pp. 213 - 245
Main Authors 平潟, 洋一, 猪狩, 淳, 池本, 秀雄, 宮崎, 義継, 小林, 信之, 中野, 邦夫, 諏訪部, 章, 横内, 弘, 稲川, 裕子, 岡田, 信司, 芦野, 有悟, 北村, 亘子, 山本, 真, 那須, 勝, 松田, 淳一, 中田, 紘一郎, 中舘, 俊英, 中谷, 龍王, 田中, 司, 武田, 英紀, 井上, 洋西, 島田, 馨, 岡田, 正彦, 森, 健, 小林, 宏行, 柳原, 克紀, 小栗, 豊子, 青木, 信樹, 二木, 芳人, 河野, 茂, 住友, みどり, 平松, 和史, 河合, 伸, 菅, 守隆, 後藤, 元, 柄沢, 安雄, 松島, 敏春, 工藤, 宏一郎, 戸坂, 雅一, 鈴木, 康稔, 下条, 文武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 25.06.2004
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ISSN0368-2781
2186-5477
DOI10.11553/antibiotics1968b.57.213

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Summary:2002年10月-2003年9月の間に全国16施設において, 下気道感染症患者476例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 原因菌と推定された細菌584株のうち578株について薬剤感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus77株, Streptococcus pneumoniae103株, Haemophilus influenzae95株, 非ムコイド型Pseudomonas aeruginosa61株, ムコイド型P. aeruginosa23株, Klebsiella pneumoniae36株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis29株などであった。 S. aureus77株のうち, Oxacillin (MPIPC) のMICが2μg/mL以下の株 (Methicillinsusceptible S. aureus: MSSA) は34株 (44.2%), OxacillinのMICが4μg/mL以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus: MRSA) は43株 (55.8%) であった。MSSAに対しては, Imipenem (IPM) およびMinocycline (MINO) の抗菌力が最も強く, 0.25μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Clindamycin (CLDM) およびアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌力も強かったが, 耐性株が検出された。Cefbtiam (CTM) は1μg/mLで全菌株の発育を阻止し, 良好な抗菌力を示し, 耐性株も検出されなかった。MRSAに対してはVancomycin (VCM) の抗菌力が最も強く, 2μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Afbekacin (ABK) の抗菌力も比較的良好で, 4μg/mLで全菌株の発育を阻止した。S. Pneumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系抗菌薬が最も強く, 0.25-0.5μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Cefbzopran (CZOP) の抗菌力も良好で, MIC90は1μg/mLであり, 2μg/mLでは全菌株の発育を阻止した。これに対して, Cefaclor (CCL), Erythromycin (EM), CLDM, およびTetracycline (TC) では耐性株が, それぞれ50.5%, 76.7%, 50.5%, 80.6%にみられた。 H. influenzaeに対する抗菌力はLevofloxacin (LVFX) が最も強く, 0.063μg/mLで96.8% (92/95) の発育を阻止した。ムコイド型および非ムコイド型P. aeruginosaに対して, Tobramycin (TOB) が最も強い抗菌力を示し, 2μg/mLで全菌株の発育を阻止した。CZOPの抗菌力も比較的良好で, ムコイド型P. aeruginosa, 非ムコイド型P. eruginosaに対するMIC90はそれぞれ8μg/mL, 16μg/mLであった。K. pneumoniaeに対する抗菌力はCZOPおよびCefbirome (CPR) が最も強く, MIC90は0.125μg/mLであった。M.(B.) catarrhalis に対しては, いずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示し, MIC90はすべて4μg/mL以下であった。 呼吸器感染症患者の年齢は, 70歳以上が全体の47.5%とほぼ半数を占めた。疾患別では細菌性肺炎と慢性気管支炎の頻度が高く, それぞれ35.7%, 33.8%であった。細菌性肺炎患者から多く分離された菌はS. pneumoniae (22.6%) であった。一方, 慢性気管支炎患者からはS. aureus (16.6%) およびP. aeruginosa (13.7%) が比較的多く分離された。抗菌薬投与前の症例で, 呼吸器感染症患者から多く分離された菌は, H. influenzaeおよびS. pneumoniaeで, その分離頻度はそれぞれ24.5%および24.2%であった。前投与抗菌薬別に分離菌種を比較したところ, 前投与抗菌薬がセフェム系あるいはマクロライド系抗菌薬であった症例では, P. aeruginosaが比較的多く分離され, ペニシリン系抗菌薬ではH. influenzaeが比較的多く分離された。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.57.213