小型蒸留装置を用いる蒸留前処理/シーケンシャルインジェクション分析法による排水中フェノール類の定量

本研究では,工場排水試験法の改良を志向して,様々な夾(きょう)雑物や懸濁物が含まれる試料にも対応可能な排水中フェノール類の小型蒸留装置を製作し,4-アミノアンチピリン法に基づくシーケンシャルインジェクション分析(SIA)法を用いて留出液中のフェノール類を定量する手法を開発した.蒸留に先立ち,まずフェノール標準溶液を用いてSIAシステムの最適化を行ったところ,フェノール濃度が10 μg L-1~10 mg L-1の濃度範囲で良好な直線が得られた(r2=0.998).SIAによるフェノール標準溶液の検出限界は0.62 μg L-1,定量下限は2.0 μg L-1であり,SIAピークの出現速度は,1...

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Published in分析化学 Vol. 62; no. 8; pp. 693 - 699
Main Authors 山下, 真以, 大野, 慎介, 手嶋, 紀雄, 酒井, 忠雄, 林, 則夫, 栗原, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2013
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Summary:本研究では,工場排水試験法の改良を志向して,様々な夾(きょう)雑物や懸濁物が含まれる試料にも対応可能な排水中フェノール類の小型蒸留装置を製作し,4-アミノアンチピリン法に基づくシーケンシャルインジェクション分析(SIA)法を用いて留出液中のフェノール類を定量する手法を開発した.蒸留に先立ち,まずフェノール標準溶液を用いてSIAシステムの最適化を行ったところ,フェノール濃度が10 μg L-1~10 mg L-1の濃度範囲で良好な直線が得られた(r2=0.998).SIAによるフェノール標準溶液の検出限界は0.62 μg L-1,定量下限は2.0 μg L-1であり,SIAピークの出現速度は,1ピーク当たり75秒と迅速であった.フェノール標準溶液を本小型蒸留装置で蒸留後,留出液を最適化後のSIAにより分析した結果,95~103% の良好な回収率を得た.本小型蒸留装置による試料体積は最小で35 mLであり,現行のJIS法の約1/7に低減された.各種の排水試料を本法により分析した結果は,JIS K 0102の試験方法による結果と良く一致した.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.62.693