遠紫外分光法による水溶液の電子遷移の解析と反応解析への展開

波長200 nm以下の遠紫外波長領域(far-ultraviolet, FUV)の光子エネルギーは,分子の様々な電子遷移に対応する.しかし水分子を含め多くの分子はFUV光を強く吸収するため,凝縮系試料のFUVスペクトル測定は困難であった.著者らは,アルミナプリズムを用いた減衰全反射(attenuated total reflection, ATR)型FUV分光システム(測定波長: 140~300 nm)を開発して,様々な液体,固体試料のFUVスペクトルを測定し,量子化学計算を援用して試料分子の電子遷移を明らかにしてきた.特に,液体水分子の第一電子遷移(Ã←X)を水素結合や溶質への水和の観点から...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in分析化学 Vol. 64; no. 3; pp. 173 - 184
Main Authors 後藤, 剛喜, 池羽田, 晶文, 森澤, 勇介, 東, 昇, 尾崎, 幸洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2015
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:波長200 nm以下の遠紫外波長領域(far-ultraviolet, FUV)の光子エネルギーは,分子の様々な電子遷移に対応する.しかし水分子を含め多くの分子はFUV光を強く吸収するため,凝縮系試料のFUVスペクトル測定は困難であった.著者らは,アルミナプリズムを用いた減衰全反射(attenuated total reflection, ATR)型FUV分光システム(測定波長: 140~300 nm)を開発して,様々な液体,固体試料のFUVスペクトルを測定し,量子化学計算を援用して試料分子の電子遷移を明らかにしてきた.特に,液体水分子の第一電子遷移(Ã←X)を水素結合や溶質への水和の観点から検討してきた.また,FUV波長帯は多くの溶質が吸収を示すことから,紫外可視波長領域では吸収を示さない水溶液試料の分光分析を行ってきた.本論文では著者らがFUV分光法で進めてきた様々な電解質水溶液の電子遷移,水溶液溶存アミノ酸の電子遷移,及び水溶液溶存オゾンの光分解反応の解析に関する成果を紹介する.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.64.173