軟部組織欠損を伴う下腿開放骨折に対しilizarov創外固定を施行された患者の理学療法の経験

【目的】高エネルギー外傷による下腿骨折は、複雑な骨折型や骨・軟部組織欠損を伴いやすい。近年、患肢温存及び機能的再建を目的としたilizarov創外固定の有用性が報告されているが、理学療法(以下PT)の立場からの報告は少ない。今回、軟部組織欠損を伴う下腿開放骨折に対しilizarov創外固定と軟部組織移植術を施行された患者を経験したので、PTの経過と共に若干の考察を加え報告する。尚、発表に際し本症例には研究の主旨を説明し了承を得ている。【症例紹介と理学療法経過】症例1.41歳男性。左下腿遠位開放骨折(gustilo分類3B)、左脛骨近位部骨折、右足関節外果骨折。トラック同士の衝突にて受傷。同日、...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 238
Main Authors 斉藤, 友美, 小野寺, 恭子, 白川, 哲也, 織田, 徹也, 河野, 義彦, 牧田, 茂, 織田, 弘美, 深田, 和浩, 秦, 和文, 鳥尾, 哲矢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.238.0

Cover

More Information
Summary:【目的】高エネルギー外傷による下腿骨折は、複雑な骨折型や骨・軟部組織欠損を伴いやすい。近年、患肢温存及び機能的再建を目的としたilizarov創外固定の有用性が報告されているが、理学療法(以下PT)の立場からの報告は少ない。今回、軟部組織欠損を伴う下腿開放骨折に対しilizarov創外固定と軟部組織移植術を施行された患者を経験したので、PTの経過と共に若干の考察を加え報告する。尚、発表に際し本症例には研究の主旨を説明し了承を得ている。【症例紹介と理学療法経過】症例1.41歳男性。左下腿遠位開放骨折(gustilo分類3B)、左脛骨近位部骨折、右足関節外果骨折。トラック同士の衝突にて受傷。同日、左脛骨4cm脚短縮の上、左下腿ilizarov創外固定を施行。第4病日PT・車椅子乗車を開始。第8病日右足関節外果骨折に対し観血的整復内固定術と左下腿皮膚欠損に対し全層植皮術を施行。第11病日左下肢免荷での平行棒内起立練習を開始。第19病日左下肢全荷重歩行を開始(疼痛によりPWB10kgが限度)。第34病日両松葉杖歩行自立。第43病日植皮の一部が生着不良であっため、分層植皮術を施行。第50病日foot ring抜釘し、左足関節ROMを開始。第111病日左脛骨近位を骨切し、第118~141病日骨延長術(2.5cm)を施行。第183病日左脛骨偽関節に対し自家骨移植術を施行。第189~202病日骨延長術(1.3cm)を再施行。第228病日両松葉杖(左下肢免荷)にて自宅退院。症例2.31歳男性。左下腿遠位開放骨折(gustilo分類3B)、左腓骨神経損傷。登山中に滑落し受傷。2週間後に救出、当院へ搬送され広範囲の皮膚・脛骨11cmを切除、一期的創外固定及び局所持続吸引装置を設置。第7病日PTを開始。第18病日右遊離腓骨移植術、右腓腹筋皮弁形成術の上、左下腿ilizarov創外固定を施行。第26病日両下肢挙上位での車椅子乗車を開始。第33病日左下肢免荷での平行棒内起立練習、左足関節ROMを開始。第41病日左下肢下垂位での平行棒内歩行練習を開始。虚血痛強く一往復程度。第47病日10kg荷重を開始。第54病日20kg荷重を開始。第60病日両松葉杖歩行自立、耐久性は150m。第75病日40kg荷重・片松葉杖歩行を開始。第97病日全荷重歩行を開始。第104病日片松葉杖にて自宅退院。【考察】本症例はいずれも軟部組織欠損を伴う下腿開放骨折であり、ilizarov創外固定と軟部組織移植術を施行された。一般的にilizarov創外固定は、強固な解剖学的整復位と骨癒合を目的とした早期荷重歩行が可能となるだけでなく、牽引による骨再生とともに、組織に持続的な張力を加えることで組織の新生・修復を促進させるという利点がある。一方軟部組織移植術では、術後1~2週間程度の安静臥床を要し、その後も皮膚性拘縮や循環障害による虚血痛の影響により理学療法に難渋することが多い。本症例らは、疼痛の範囲内での段階的な荷重歩行を進めていくことで、ilizarov創外固定下での在宅復帰が可能となり、患肢の温存と最大限の機能回復が図れた。
Bibliography:P2-13-124
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.238.0