下顎運動パラメータの安定性について 3年経過後の評価から

目的: 下顎運動の経年的な安定性を調べることを目的に, 健常者における初回と3年経過時の下顎運動結果の関係を下顎運動解析から検討した. 方法: 岩手医科大学歯学部学生のなかで, 顎機能に異常がない27名 (男性20名, 女性7名, 平均年齢20.4±2.4歳) を被験者とし, 6自由度下顎運動測定装置を用いて, 下顎運動記録を行った. 下顎限界運動および習慣性開閉口運動における, 切歯点および左右顆頭点の移動距離を求め, 初回と3年経過時の測定結果の比較を行った. 結果: 前方滑走運動時, 左右側方滑走運動時, 習慣性開閉口運動時において, いずれのパラメータにおいても初回と3年経過時の間に有...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 47; no. 2; pp. 326 - 334
Main Authors 佐藤, 真, 藤澤, 政紀, 鈴木, 卓哉, 金村, 清孝, 工藤, 亜希子, 佐々木, 直光, 石橋, 寛二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本補綴歯科学会 10.04.2003
日本補綴歯科学会
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:目的: 下顎運動の経年的な安定性を調べることを目的に, 健常者における初回と3年経過時の下顎運動結果の関係を下顎運動解析から検討した. 方法: 岩手医科大学歯学部学生のなかで, 顎機能に異常がない27名 (男性20名, 女性7名, 平均年齢20.4±2.4歳) を被験者とし, 6自由度下顎運動測定装置を用いて, 下顎運動記録を行った. 下顎限界運動および習慣性開閉口運動における, 切歯点および左右顆頭点の移動距離を求め, 初回と3年経過時の測定結果の比較を行った. 結果: 前方滑走運動時, 左右側方滑走運動時, 習慣性開閉口運動時において, いずれのパラメータにおいても初回と3年経過時の間に有意差を認めなかった (対応のあるt検定). また, 測定値間の相関を調べた結果, 12項目中11項目で有意な相関が認められた. 初回の測定後に顎関節症の症状を発症した被験者が5名出現したが, これらの被験者の初回のデータから将来の発症を示唆する特徴的な点は認められなかった. 結論: 本研究結果より, 健常者における下顎運動測定データでは経年的な変動が少なく, 再現性を有する安定したパラメータとして評価しうることから, 顎機能の変化を評価するうえでの有用性が確認できた. しかしながら, 下顎運動測定結果のみで症状の発症を予知するパラメータとは考えにくいものと思われる.
ISSN:0389-5386
1883-177X
DOI:10.2186/jjps.47.326