座り動作と立ち上がり動作の比較

【目的】立ち上がり、座るという動作は日常生活動作の中でも理学療法の対象となる基本動作の一つである。虚弱高齢者や片麻痺者等の障害者では立ち上がることが可能であっても勢いよく座ってしまう姿が見られることがあり、立ち上がり動作と座り動作とでは動作が異なる。立ち上がり動作については多くの先行研究があるが、座り動作の研究は少ない。そこで、座り動作は立ち上がり動作とどう違うのか、健常者について検討を行った。【方法】対象は立ち座りに影響のある疾患の既往がない健常若年者7名(女性4名、男性3名、平均28.2±2.3歳)とし、計測の目的と内容について十分な説明を行い、書面による同意を得た後に台からの座り動作及び...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 127
Main Authors 大久保, 幸恵, 伊東, 元
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2009
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】立ち上がり、座るという動作は日常生活動作の中でも理学療法の対象となる基本動作の一つである。虚弱高齢者や片麻痺者等の障害者では立ち上がることが可能であっても勢いよく座ってしまう姿が見られることがあり、立ち上がり動作と座り動作とでは動作が異なる。立ち上がり動作については多くの先行研究があるが、座り動作の研究は少ない。そこで、座り動作は立ち上がり動作とどう違うのか、健常者について検討を行った。【方法】対象は立ち座りに影響のある疾患の既往がない健常若年者7名(女性4名、男性3名、平均28.2±2.3歳)とし、計測の目的と内容について十分な説明を行い、書面による同意を得た後に台からの座り動作及び立ち上がり動作の計測を行った。計測には三次元動作解析装置及び座面反力計としてForce Plateを使用した。使用する台は座面反力計を乗せて高さを38.5cmとし、着座位置は大腿中央が座面端となるように、足部位置は両足部を平行に、腓骨頭から下ろした垂線が第5中足骨頭を通るように条件を統一した。動作は「普段行っている速さ」で行うよう指示した。座面にかかる力が座り動作では体重の1%以上となる点を着殿、立ち上がり動作では体重の1%以下となる点を離殿とした。動作開始から終了までを着殿、離殿でそれぞれ二相に分けて時間を計測した。体幹の動きの指標として、第7頸椎(以下C7)の上下移動量及び前後移動量を座り動作と立ち上がり動作で比較した。また、C7と第5腰椎を結んだ直線が鉛直線に対して成す最大の角度を最大体幹前傾角度とした。【結果】健常若年者の離殿前時間は0.57±0.11秒、離殿後時間は1.02±0.29秒であった。着殿前時間は1.16±0.35秒、着殿後時間は0.69±0.13秒であった。動作全体に占める割合は離殿前時間が36.4±6.1%、着殿後時間が38.2±8.4%で離殿前時間と着殿後時間で大きな差は見られなかった。また、C7の上下移動量は座り動作で9.7±4.3cm、立ち上がり動作で8.6±3.5cm、前後移動量は座り動作で50.4±7.2cm、立ち上がり動作で49.9±7.8cm、最大体幹前傾角度は座り動作で64±9度、立ち上がり動作で60±9度でいずれも立ち上がり動作と座り動作で大きな差は見られなかった。【考察】結果より、健常若年者における座り動作と立ち上がり動作とは離殿前と着殿後の動作時間割合がほぼ同じで、運動方向が逆の相似形の運動軌跡を描く動作であるといえる。従って、座り動作と立ち上がり動作が異なる障害者では、それぞれの動作を構成する運動要素が異なることが考えられ、座り動作にも着目した動作練習が必要であることが示唆された。
Bibliography:127
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.28.0.127.0