ロタウィルスによる脳梁膨大部脳症・小脳炎で多彩な症状を呈した4歳児例の理学療法経験

【はじめに】 ロタウィルスによる脳梁膨大部脳症、小脳炎の4歳児例が多彩な症状を呈した。評価・治療に苦慮したが、種々の見地からのアプローチで良好な経過が得られたため報告する。本報告は両親に説明と同意を得た。 【症例】 4歳8ヶ月、14kgの男児。第1病日、嘔吐と経口摂取困難、ロタウィルス陽性にて他院で内科的治療。3病日に意識低下、数秒の全身性強直性痙攣あり当院へ入院。胃腸炎関連痙攣の疑いで治療。4病日、MRIで脳梁膨大部脳症と診断されSteroid投与。6病日にγ-globulin、8病日からHirtoninが投与された。11病日に小脳炎を合併し、13病日からリハビリ開始、Steroid pul...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 257
Main Authors 宮古, 裕樹, 池上, 真理子, 鶴丸, 靖子, 小関, しのぶ, 秋澤, 理香, 古川, 俊明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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Summary:【はじめに】 ロタウィルスによる脳梁膨大部脳症、小脳炎の4歳児例が多彩な症状を呈した。評価・治療に苦慮したが、種々の見地からのアプローチで良好な経過が得られたため報告する。本報告は両親に説明と同意を得た。 【症例】 4歳8ヶ月、14kgの男児。第1病日、嘔吐と経口摂取困難、ロタウィルス陽性にて他院で内科的治療。3病日に意識低下、数秒の全身性強直性痙攣あり当院へ入院。胃腸炎関連痙攣の疑いで治療。4病日、MRIで脳梁膨大部脳症と診断されSteroid投与。6病日にγ-globulin、8病日からHirtoninが投与された。11病日に小脳炎を合併し、13病日からリハビリ開始、Steroid pulse療法を2クール施行。 【評価】 JCS1桁、追視や従命は不可能で発話無く、摂食等も困難。全身的に低緊張だが随意運動は認め、寝返りが可能だった。しかし、動作性は伸筋優位、性急かつ拙劣。多動で受動的体動に啼泣して抵抗を示し、離床に難渋して生活範囲が狭小化した。 【経過・考察】 当初、多彩な症状で積極的なリハビリが困難。そのため26病日より運動学、知覚・認知的な観点から評価、治療を再考した。bed上の環境適応性は、低緊張による頸部不安定性、腹部活動性低下のため支持面に対して伸展優位の「押しつけ」で推進筋群(多関節筋)の活動性亢進が推察された。そのために諸関節の機能的連結がなされず姿勢の定位が困難、不安定で意識や感情、それぞれの知覚システムに影響をきたし、種々の認知、行為面に問題を惹起していると考えられた。そこで、安定性の保障や腹部活動性向上、伸展抑制のためにpositioningやplacing等で適切な支持面知覚「点」から「面」を促通すると固定筋群が活性化され姿勢の定位が可能となり、機能的かつ円滑な姿勢、動作へと変化した。その事が種々の知覚・認知面の適正化に寄与し、覚醒度向上や情動の安定に繋がり、受動的な車椅子乗車や生活範囲拡大に影響したと考えられた。また、多動性が減少して感覚刺激への反応も示し、意志疎通や摂食・嚥下が可能になるなど行為面も改善した。第34病日、起居動作は可能となったが固定性、持続性の低さ、伸展優位の動作が認められた。また、小脳性無言症やwide base・腰椎前弯・骨盤前傾・膝過伸展などの立位alignment不良、跛行を認め、不安定で軽介助を要した。それに対して学習効果、代償動作の抑制を考慮し、小児特性を踏まえて快・不快の感情面を確認しつつ、遊びを通じた適切な運動課題を施行。体幹、股関節周囲の機能低下には、筋緊張調整や姿勢調節のために動的座位や膝立ち等の活動に重点をおいた。その際に神経発達学を加味し、自動的な運動学習定着のため看護師、家族に運動・生活動作の是非を厳密に管理して頂き、段階的に許容範囲を拡大した結果、55病日には跛行なく歩行可能、遠城寺発達検査で3歳後半に至り退院。
Bibliography:P2-15-143
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.257.0