人工膝関節全置換術後の立位荷重量と膝関節伸展角度との関係

【目的】  人工膝関節全置換術 (以下,TKA)実施の目的は,変形性膝関節症の大腿-脛骨間のアライメント改善である.しかし,大腿-脛骨間のアライメントが改善したにも関わらず,立位における膝関節伸展が得られず,術側への荷重量が増加しない症例を経験することがある.そこで本研究では,TKA術後の立位荷重量と膝関節伸展角度を経時的に計測し,立位荷重量と膝関節伸展角度との関係性を示すこと,術前の立位姿勢の関係について検討することを目的とした. 【方法】  対象は,当院にてTKAを施行した患者4名(平均年齢73.3±5.5歳,男性1名・女性3名)とした.三次元動作解析システムVICON MX(VICON社...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 117
Main Authors 四宮, 美穂, 福井, 康之, 野中, 綾乃, 原藤, 健吾, 大谷, 俊郎, 尾崎, 正大, 櫻井, 愛子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.117.0

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Summary:【目的】  人工膝関節全置換術 (以下,TKA)実施の目的は,変形性膝関節症の大腿-脛骨間のアライメント改善である.しかし,大腿-脛骨間のアライメントが改善したにも関わらず,立位における膝関節伸展が得られず,術側への荷重量が増加しない症例を経験することがある.そこで本研究では,TKA術後の立位荷重量と膝関節伸展角度を経時的に計測し,立位荷重量と膝関節伸展角度との関係性を示すこと,術前の立位姿勢の関係について検討することを目的とした. 【方法】  対象は,当院にてTKAを施行した患者4名(平均年齢73.3±5.5歳,男性1名・女性3名)とした.三次元動作解析システムVICON MX(VICON社製),床反力計(AMTI社製)を用いて,術前と術後3日目から在院期間中(平均日数26.75日)の静止立位姿勢の計測を行った.臨床歩行分析研究会の推奨点にマーカーを貼付し,荷重量,膝関節伸展角度を求め,静止立位3秒間の平均値を代表値とした.術後日数と膝関節伸展角度,荷重量との関係,荷重量と立位膝関節伸展角度との関係は,Peasonの相関係数を用いて統計学的検討を行った. 【結果】  4例中3例のTKA患者では,術後経過とともに荷重量が増加し,膝関節伸展角度が増大する傾向が見られた.術後経過において荷重量の増加が認められなかった1例と膝関節伸展角度の変化が小さかった1例は異なる症例であり,術後荷重量と立位膝関節伸展角度との相関を認めたのは2例のみであった(r>0.5).また,術前の術側荷重量が大きいほど,術後荷重量が術前以上になった期間が短く,術前術側への荷重量が非術側より大きかった1例は,術直後から荷重量が多い傾向を示した. 【考察】  術後経過において荷重量の増加が認められなかった1例は,反対側が既にTKAを施行済みであり,術後に非術側への荷重量が増加しても疼痛出現の心配がないため,術側の荷重量が増加していかなかったと考えられる.膝関節伸展角度の変化が小さかった1例は術前から屈曲位で非術側以上の荷重量であったため,術後荷重量が増加しても屈曲位での立位姿勢が残存してしまったということが予測される.本研究から,術後経過とともに立位膝関節伸展と荷重量の増加が得られない症例に関しては,術前の姿勢や荷重割合を考慮し理学療法を進める必要性があることが示唆された.
Bibliography:P1-1-003
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.117.0