震災復興型高齢者住宅におけるグループリビングのシステム化に関する研究

阪神・淡路大震災での教訓の1つに,高齢者の生活にとって,地域コミュニティが不可欠であることが明らかになったことがある。実際に地域型仮設住宅(いわゆるケア付き仮設住宅)では,血縁を越えた共同生活の有効性が確認され,共同生活のありかたについても貴重な経験が蓄積されてきた。個々の世帯が近隣関係や地域関係を失いつつある今日の情況の中であるからこそ,一層インフォーマルを「地域含み資産」としての住民交流や相互扶助などを生かした住まいづくり,住文化づくりが求められていることが共通の認識になりつつある。本研究の目的は,阪神・淡路大震災の被災地において復旧・復興の過程で示された震災復興型高齢者住宅でのグループリ...

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Published in住宅総合研究財団研究年報 Vol. 25; pp. 141 - 152
Main Authors 上野, 勝代, 水野, 弘之, 牧里, 毎治, 中塚, 則男, 相良, 二朗, 奥山, 佳世
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般財団法人 住総研 1999
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Summary:阪神・淡路大震災での教訓の1つに,高齢者の生活にとって,地域コミュニティが不可欠であることが明らかになったことがある。実際に地域型仮設住宅(いわゆるケア付き仮設住宅)では,血縁を越えた共同生活の有効性が確認され,共同生活のありかたについても貴重な経験が蓄積されてきた。個々の世帯が近隣関係や地域関係を失いつつある今日の情況の中であるからこそ,一層インフォーマルを「地域含み資産」としての住民交流や相互扶助などを生かした住まいづくり,住文化づくりが求められていることが共通の認識になりつつある。本研究の目的は,阪神・淡路大震災の被災地において復旧・復興の過程で示された震災復興型高齢者住宅でのグループリビングのシステム化に着目して,現時点での実態と課題を明らかにすることである。具体的な内容としては,以下のとおりである。(1)震災復興計画における高齢者対応住宅ならびに地域ケアシステムの概要とその特徴について検討,(2)震災復興型コレクティプ住宅の入居者像と住み方についての実態調査を行ない,(3)シルバーハウジングにおけるLSA(ライフ・サポート・アドバイザー)業務の実態と期待される今後の役割について分析し,(4)シルバーハウジングを含む災害復興公営住宅団地におけるコミュニティづくりの状況を先進事例から検討し,(5)兵庫県における住居改善システム中でも住宅改造資金給付制度の実施実態をアンケート調査より明らかにした。また,今後の検討課題として,コレクティブ住宅では入居者が虚弱化した場合の対応,LSAの専門性,物的なまちづくり事業とも連動した「地域コミュニティ」づくりの必要性が,その論点として求められることがわかった。
ISSN:0916-1864
2423-9879
DOI:10.20803/jusokennen.25.0_141