住生産における産業構造および生産技術の変化に関する日英比較研究(1)
2年間にまたがるこの研究は,日英両国における住宅生産枝術の変化を戦後の産業構造の変遷という文脈の中で比較分析しその要因を探ろうとするものである。初年度の作業は,統計資料の比較可能性の検討,住宅生産関連の各セクターの成り立ち,および工業化住宅の比較を中心にとりまとめられた。統計システムを比較する作業においては,住宅生産に関連する統計項目を抽出し,その内容を厳密に比較対照することが行われた。日英の統計項目はほぼ同様であるが,内容的には定義や分類が異なるものも少なく,用語の意味上の類似性によって対応付けることは危険である。それらには,住文化の伝統及び制度の違いが反映されており,目的に応じ統計の集計区...
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Published in | 住宅総合研究財団研究年報 Vol. 18; pp. 379 - 392 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般財団法人 住総研
1992
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Summary: | 2年間にまたがるこの研究は,日英両国における住宅生産枝術の変化を戦後の産業構造の変遷という文脈の中で比較分析しその要因を探ろうとするものである。初年度の作業は,統計資料の比較可能性の検討,住宅生産関連の各セクターの成り立ち,および工業化住宅の比較を中心にとりまとめられた。統計システムを比較する作業においては,住宅生産に関連する統計項目を抽出し,その内容を厳密に比較対照することが行われた。日英の統計項目はほぼ同様であるが,内容的には定義や分類が異なるものも少なく,用語の意味上の類似性によって対応付けることは危険である。それらには,住文化の伝統及び制度の違いが反映されており,目的に応じ統計の集計区分を変えることも必要となる。広範な統計ソースについてそのための整理がなされたことが成果の第一である。公表されている統計二次資料による比較研究の可能性を具体的に検討した部分では,住生産の産業構造と住宅供給セクターの抽出が題材に取り上げられた。企業活動の総体としての産業構造を記述する要素は規模および業種であるが統計項目の定義・分類の差異以前にそれらのデータのカバレッジと信頼性が問題となることが確かめられた。ただし,英国の建設工事統計がプロジェクトごとの報告を義務づけているため,日本より正確な産業構造の把握が可能となっている。民間の住宅建設活動が把握しにくいということは,すなわち民間住宅供給セクターの抽出が困難であることを意味する。しかし,これに関連して,日本の「町場-野丁場」と英国の「修繕・メンテナンス-新築」という異なった軸が,規模による棲み分けの基本的構図となっていることが明らかにされた。また,これに日本の住宅統計に独特の「構造別」および「利用関係別」(持ち家,分譲,貸家等)の区分と,英国における「投機的」住宅建設の概念とを重ね合わせることにより,住宅供給の産業化の過程を浮き彫りにできることが示唆された。技術変化に関する検討は,このような在来的手法の産業化という文脈の中で扱われる予定である。 |
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ISSN: | 0916-1864 2423-9879 |
DOI: | 10.20803/jusokennen.18.0_379 |