同時多波長分散型蛍光X線分析装置の開発及びリチウムイオン電池正極材の状態分析への応用

リチウムイオン電池(Lithium-ion battery, LIB)の開発過程ではLIBの各構成要素の反応機構や劣化原因の解明のため,様々な状態分析手法が用いられている.著者らは実験室でのLIB用正極活物質の状態分析の実現を目的に,新たな波長分散型蛍光X線分析装置を開発した.本装置は走査機構を搭載せず,約6 keVから8 keVまでのエネルギー領域の蛍光X線スペクトルを高精度に取得することができる.ピークエネルギーの同定精度は0.1 eVを有し,価数の異なるマンガン酸化物において,Mn Kβ1,3線のわずかなピークエネルギーの違いを高い再現性でとらえることを確認した.さらに,LIB用正極活物...

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Published in分析化学 Vol. 69; no. 9; pp. 471 - 479
Main Authors 大森, 崇史, 田中, 秀明, 米田, 哲弥, 小林, 美佐子, 佐藤, 賢治, 柳田, 昌宏
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.09.2020
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.69.471

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Summary:リチウムイオン電池(Lithium-ion battery, LIB)の開発過程ではLIBの各構成要素の反応機構や劣化原因の解明のため,様々な状態分析手法が用いられている.著者らは実験室でのLIB用正極活物質の状態分析の実現を目的に,新たな波長分散型蛍光X線分析装置を開発した.本装置は走査機構を搭載せず,約6 keVから8 keVまでのエネルギー領域の蛍光X線スペクトルを高精度に取得することができる.ピークエネルギーの同定精度は0.1 eVを有し,価数の異なるマンガン酸化物において,Mn Kβ1,3線のわずかなピークエネルギーの違いを高い再現性でとらえることを確認した.さらに,LIB用正極活物質として代表的な三元系活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2を対象に,その充放電過程における遷移元素成分の状態変化について評価し,Niの変化がCoの変化より大きいことを確認した.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.69.471