生活保護世帯の世帯構造と個人指標

生活保護に関する政府統計は,被保護層を「高齢者世帯・母子世帯・障害者世帯・傷病者世帯・その他の世帯」の5類型で把握しているが,世帯定義の基準は質的に異なっており整合性がない.また,政府統計では学歴階層が把握できないなど被保護層の実態把握には限界がある.そこで本稿では,A自治体において2005年度に保護が廃止された全世帯を対象として,既存の世帯類型を世帯構造から捉え直すとともに,傷病・障害と学歴階層の指標を加えて被保護層の特徴を分析した.その結果,(1)障害者世帯・傷病者世帯以外でも傷病・障害と貧困の関連が見いだされること,(2)母子世帯以外にも有子世帯が一定数存在し,成人子の存在も含めて「子ど...

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Published in社会福祉学 Vol. 50; no. 1; pp. 16 - 28
Main Authors 湯澤, 直美, 藤原, 千沙
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本社会福祉学会 31.05.2009
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ISSN0911-0232
2424-2608
DOI10.24469/jssw.50.1_16

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Summary:生活保護に関する政府統計は,被保護層を「高齢者世帯・母子世帯・障害者世帯・傷病者世帯・その他の世帯」の5類型で把握しているが,世帯定義の基準は質的に異なっており整合性がない.また,政府統計では学歴階層が把握できないなど被保護層の実態把握には限界がある.そこで本稿では,A自治体において2005年度に保護が廃止された全世帯を対象として,既存の世帯類型を世帯構造から捉え直すとともに,傷病・障害と学歴階層の指標を加えて被保護層の特徴を分析した.その結果,(1)障害者世帯・傷病者世帯以外でも傷病・障害と貧困の関連が見いだされること,(2)母子世帯以外にも有子世帯が一定数存在し,成人子の存在も含めて「子どもの貧困」の視角が必要であること,(3)世帯主とその配偶者の学歴階層は同一世代の学歴構成と比べて低いほうに偏りがあること,といった特徴や知見が見いだされ,被保護層の実態把握に新たな指標の必要性を提示した.
ISSN:0911-0232
2424-2608
DOI:10.24469/jssw.50.1_16