当院における両側同時人工膝関節全置換術のクリニカルパスと理学療法
【目的】 当院ではクリニカルパス(以下、パス)を使用した両側同時人工膝関節全置換術(以下、両側TKA)が行われている。パスは、術後第1病日からROM訓練、移乗動作訓練などを開始し、第2病日から機能訓練室での両側全荷重下で立位歩行訓練に進み、第15病日で歩行能力を獲得し退院することを目標としている。このようなパスを使用した両側TKAに対する理学療法の報告は少ない。今回、両側TKAに対する理学療法経過を調査し、特に歩行能力に着目して報告する。 【対象と方法】 対象は2010年1月から12月の期間で、パス適用の両側TKA30症例中、精神症状によるパス離脱1例と慢性関節リウマチ2例を除いた27症例(男...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 119 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2011
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.30.0.119.0 |
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Summary: | 【目的】 当院ではクリニカルパス(以下、パス)を使用した両側同時人工膝関節全置換術(以下、両側TKA)が行われている。パスは、術後第1病日からROM訓練、移乗動作訓練などを開始し、第2病日から機能訓練室での両側全荷重下で立位歩行訓練に進み、第15病日で歩行能力を獲得し退院することを目標としている。このようなパスを使用した両側TKAに対する理学療法の報告は少ない。今回、両側TKAに対する理学療法経過を調査し、特に歩行能力に着目して報告する。 【対象と方法】 対象は2010年1月から12月の期間で、パス適用の両側TKA30症例中、精神症状によるパス離脱1例と慢性関節リウマチ2例を除いた27症例(男性3例、女性24例)とした。検討項目は、院内片T杖歩行自立日、術後在院日数、入院前/退院時移動能力、歩行訓練内容と経過、大腿四頭筋筋力、膝関節ROMとし、後方視的に調査した。退院時片T杖歩行自立群(以下、自立群)と非自立群に分け比較検討した。 【結果】 全例が自宅退院したが、退院時移動能力は、片T杖歩行自立14例、両T杖歩行自立1例、シルバーカー1例、片T杖歩行見守り 5例、両T杖歩行見守り 4例、車椅子 2例であった。自立群は術後15.6±3.9日で院内自立していた。術後在院日数は、自立群21.0±5.0日、非自立群22.9±3.5日で両群に有意差はなかった。MMT4以上の筋力の症例は、自立群では初回39%、最終100%、非自立群で初回29%、最終69%であった。膝関節ROMでは屈曲90°以上が、自立群で初回29%、最終89%、非自立群で初回35%、最終92%であった。また伸展制限は、自立群で初回96%、最終81%、非自立群で96%、最終79%であった。訓練経過は、両群とも歩行器・平行棒から歩行訓練を開始した。自立群では早期に杖歩行訓練を開始し、訓練期間の6割を片T杖歩行訓練にあてていた。非自立群では疼痛や歩行不安定性のために杖歩行訓練の開始が遅れ、歩行器と平行棒の訓練期間が半分を占め、また様々な歩行補助具を試していた。入院前移動能力では、自立群は全例が杖歩行以上の能力であったが、非自立群ではシルバーカーや車椅子の患者が含まれていた。 【考察】 非自立群で、入院前にシルバーカーや車椅子の患者は全例片T杖歩行自立に至らなかったことから、入院前の移動能力が術後の移動能力に関係することが示唆された。また自立群は最終時に全例MMT4以上であったことから、筋力が片T杖歩行自立の重要な要素と考えられる。非自立群は、筋力低下や痛み、不安定性のため歩行器・平行棒での歩行訓練に多くの時間をあてていた。このように、患者の状態に応じた訓練に加え、歩行補助具を漸進的に選択したことは有効であった。 |
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Bibliography: | P1-1-005 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.30.0.119.0 |