コロナ禍におけるトレーニング実習の実践と課題 - 大学の授業評価アンケートからの見た対面授業との比較

背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、前例のない感染爆発として全世界に広がった。この影響により大学で実施される授業の多くがオンラインを活用した遠隔授業となった。しかしながら、コロナ禍での遠隔授業による授業の質について検証した報告は限られており、特にスポーツ系学部の授業に関する知見は得られていない。実践報告の目的: K 大学スポーツ系学部にて実施されたトレーニング実習において、COVID-19 影響前の2019 年度授業評価アンケートの結果と、COVID-19 影響後の2020 年度授業評価アンケートの結果を比較分析することを目的とした。対象者:2019 年度にトレーニング実習を...

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Published in日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 p. O08
Main Authors 篠原, 純司, 福本, 隆男, 名頭薗, 亮太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本トレーニング指導学会 2020
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Summary:背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、前例のない感染爆発として全世界に広がった。この影響により大学で実施される授業の多くがオンラインを活用した遠隔授業となった。しかしながら、コロナ禍での遠隔授業による授業の質について検証した報告は限られており、特にスポーツ系学部の授業に関する知見は得られていない。実践報告の目的: K 大学スポーツ系学部にて実施されたトレーニング実習において、COVID-19 影響前の2019 年度授業評価アンケートの結果と、COVID-19 影響後の2020 年度授業評価アンケートの結果を比較分析することを目的とした。対象者:2019 年度にトレーニング実習を受講し授業評価アンケートに回答した大学生109 名(男子61 名、女子48 名、回答率86.51%)、2020 年度にトレーニング実習を受講し授業評価アンケートに回答した大学生96 名(男子56 名、女子40 名、回答率88.07%)とした。測定環境:2019 年度は、全ての授業をトレーニングルームにて実施し、授業評価アンケートの回答を得た。2020 年度は、全ての授業をオンデマンド型の遠隔授業にて実施し、授業評価アンケートの回答を得た。分析方法:2019 年度と2020年度の授業評価アンケート結果から、特に重要と思われる6 項目(1.出席、2.意欲、3.予習・復習、4.理解度、5.聞き取りやすさ、6.満足度)を選択し比較対象とした。対象者は各項目において5 段階での評価を行った。統計処理は、各比較に対応のないt 検定を行い、有意水準を5%未満とした。また、各比較の実質的効果の大きさを検証するためCohen's dを用いた効果量と95%信頼区間を算出した。結果:出席において、2020 年度は2019 年度に比べ有意な向上が見られた(2019 年度:4.67±0.51, 2020 年度:4.84±0.44,P<0.05)。その他、全ての項目において2020 年度は2019 年度に比べ有意な低下が見られた。意欲(2019 年度:4.74±0.50,2020 年度:4.28±0.64,P<0.05)、予習・復習(2019 年度:3.84±1.26,2020 年度:3.35±0.91,P<0.05)、理解度(2019 年度:4.67±0.61,2020 年度:3.98±0.71,P<0.05)、聞き取りやすさ(2019 年度:4.69±0.60,2020 年度:4.25±0.62,P<0.05)、満足度(2019 年度:4.56±0.80,2020 年度:4.11±0.74,P<0.05)。効果量は、意欲(d=-0.81,CI:0.51,1.08)と理解度(d=1.05,CI:0.74,1.33)が大、予習・復習(d=0.44,CI:0.16,0.71)、聞き取りやすさ(d=0.72,CI:0.43,0.99)、満足度(d=0.58,CI:0.29,0.85)が中、出席(d=-0.36,CI:-0.63,-0.08)は小であった。考察:コロナ禍におけるオンデマンド型遠隔授業によるトレーニング実習では、出席は向上したが、意欲、予習・復習、理解度、聞き取りやすさ、満足度は低下した。また、意欲と理解度についての効果量が大であったことからも、授業の質が著しく低下したことが示唆された。【現場への提言】コロナ禍におけるトレーニング実習においては、双方向型での遠隔授業や、感染予防を徹底した上で、対面での実技指導の回を設けるなど、授業の質を落とさない工夫が求められる。
ISSN:2433-7773
2434-3323
DOI:10.32171/cpjssct.2020.0_O08