維持期脳卒中患者の下肢装具再作成における装具の工夫

【目的】 装具療法は、患者の有する機能を最大限に生かすものでなくてはならず、患者の身体機能にあわせた適切な処方が求められる。今回、足関節背屈機能に改善は認めたものの、足部内反が残存した維持期脳卒中患者に対し、可撓性の高い素材を使用し、かつ足内側縁を強化したショートPAFOを作製した。一定の効果を得たので、その経緯と装具への工夫について考察を交えて報告する。尚、本症例に趣旨を説明し同意を得ている。 【症例紹介】 平成22年4月9日に脳出血にて右片麻痺を呈した40代男性である。同年4月13日にリハビリ目的にて当院入院した。5月15日にPAFO作製。11月1日当院退院し、その後継続して週3回外来リハ...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 274
Main Authors 鈴木, 英二(MD), 戸塚, 寛之, 佐々木, 和人, 荻野, 雅史, 強瀬, 敏正, 上野, 貴大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.274.0

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Summary:【目的】 装具療法は、患者の有する機能を最大限に生かすものでなくてはならず、患者の身体機能にあわせた適切な処方が求められる。今回、足関節背屈機能に改善は認めたものの、足部内反が残存した維持期脳卒中患者に対し、可撓性の高い素材を使用し、かつ足内側縁を強化したショートPAFOを作製した。一定の効果を得たので、その経緯と装具への工夫について考察を交えて報告する。尚、本症例に趣旨を説明し同意を得ている。 【症例紹介】 平成22年4月9日に脳出血にて右片麻痺を呈した40代男性である。同年4月13日にリハビリ目的にて当院入院した。5月15日にPAFO作製。11月1日当院退院し、その後継続して週3回外来リハビリテーションを実施した。退院時理学療法評価として、麻痺側下肢Brunnstrom Recovery StsgeIVレベル。感覚は表在・深部ともに軽度鈍麻。筋緊張は下腿三頭筋・後脛骨筋にて軽度亢進。歩行はT字杖とPAFOにて屋内・外ともに自立、階段昇降は手すり使用で自立であった。 【装具作製の経緯と特長】 退院直後は足部の内反を認めており一般的な靴べら式のPAFOの適応となっていたが、リハビリテーション継続に伴い足関節背屈機能に改善を認めた。そのため、足部内反のみを制動できる下肢装具が望ましいと判断し、ショートPAFOを再作製した。特長としては、全体をトレラッククリアーという非常に軟らかい素材で作製し、その内部に2mmのポリプロピレンで前足部から踵骨までを補強した。距腿関節の可動性は損なわず、踵骨を正中に保ち、かつ中足部と前足部が立脚期で平らに接地できる構造である。 【装具適応効果判定】 既存のPAFOと今回新たに作製したショートPAFOを歩行評価により比較した結果、10m歩行速度、6分間歩行距離に大きな差は認められなかった。歩容においても同様に大きな違いは認めなかった。階段昇降ではショートPAFOで降段速度が増大した。ショートPAFO装着時は、足関節の動かしやすさ、階段の降りやすさという本症例の実感も得ることができた。 【考察】 ショートPAFOと既存のPAFOでは、歩行評価及び歩容評価において大きな差を認めず、本症例にとって、足部内反のみを制動でき、かつ底背屈の可撓性が高いという今回作製した装具は妥当であったといえる。ショートPAFOに用いた2mmのポリプロピレンは一般的なPAFOには殆ど使われることは無い。そういった素材とトレラッククリアーという非常に軟らかい素材を組み合わせ足関節の可動性の確保と足部内反の制動に対し、適切な装具処方ができたことは今後の臨床に意義があったと考える。
Bibliography:P2-17-160
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.274.0