膝関節伸展制限のある児に対しPTB式短下肢装具を処方した経験
【目的】 先天性多発性関節拘縮症により左膝関節伸展制限があり、つかまり立位・歩行が不安定な児に対しPTB式短下肢装具(patellar tendon-bearing ankle foot orthosis:以下PTB式AFO)を処方した。それにより、つかまり立位が安定し良好な結果を得られたのでここに報告する。なお、本学会での報告は保護者から了承を得ている。 【症例紹介・方法】 7歳、女児。診断名:先天性多発性関節拘縮症(両側股関節脱臼、両側内反足)、Dandy - Walker 症候群。両側内反足に対しては3歳時に底背屈内外反0度で固定術を施行。両側股関節脱臼は残存しているが訓練時や日常生活で...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 175 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.175.0 |
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Summary: | 【目的】 先天性多発性関節拘縮症により左膝関節伸展制限があり、つかまり立位・歩行が不安定な児に対しPTB式短下肢装具(patellar tendon-bearing ankle foot orthosis:以下PTB式AFO)を処方した。それにより、つかまり立位が安定し良好な結果を得られたのでここに報告する。なお、本学会での報告は保護者から了承を得ている。 【症例紹介・方法】 7歳、女児。診断名:先天性多発性関節拘縮症(両側股関節脱臼、両側内反足)、Dandy - Walker 症候群。両側内反足に対しては3歳時に底背屈内外反0度で固定術を施行。両側股関節脱臼は残存しているが訓練時や日常生活での短時間の立位等は医師から許可がでている。Dandy - Walker 症候群の合併症である水頭症に対しては幼少の頃シャント術施行している。 状態は、屋内はいざりまたは四つ這いにて移動は自立。養護学校小学部では車いす移動自立。移乗は要介助。床上座位、膝立ち自立。つかまり膝歩き自立。手離し膝歩き不可。つかまり立位は、右下肢はプラスチック型短下肢装具(以下AFO)を装着し支持良好、左下肢は股関節軽度屈曲外旋位、膝関節伸展-30度、足関節底背屈0度の状態で足部外側に向いて足尖のみ接地しており、AFOを装着しているが左下肢への荷重は困難。歩行はてすり使用にて監視~軽介助にて極短距離可能。左下肢立脚中期~後期にかけて膝折れを生じるため、常時左下肢を前に出し右下肢のみに荷重をかけて歩行する状態で実用性はない。 そこで、今までの装具は座位時の下肢荷重を重視したが、今回は立位や歩行に生かせるような装具の検討を行った。右下肢はAFOを装着しなくても支持良好となった。しかし、足部の筋力は0のため遊脚期に足先が床にひっかかるので靴を履くことにした。左下肢は膝関節が屈曲位でも荷重できるよう下腿全体で支持できるPTB式AFO(金属支柱)にした。足関節は底背屈0度で固定されているため踵が浮くので補高を施した。また、足部全体が外側に倒れているためフレアヒール(外側)をつけた。 【結果】 左下肢に荷重されても膝折れなく支持可能となり、つかまり立位は安定した。椅子からの立ち上がりも左下肢に荷重をかけられるようになり自力で可能となった。手すり使用での歩行も左下肢に荷重がかけられるようになり、右下肢も前方へ振り出せるようになった。日常生活では、排泄の後に両側の手すりを使って洋式便器からの立ち上がり及び立位保持が自力で可能となった。 【考察】 PTB式AFOはPTB下腿義足と同じ原理で、膝蓋靱帯で体重を支持しソケットより下位にある下腿や足部を免荷しようとする装具である。我々は、下腿や足部免荷ではなく、膝屈曲位での支持を可能にする目的でPTB式AFOを処方し、良好な結果を得られた。今後も更に立位の場面を生かした日常的な動作を増やしていきたい。 |
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Bibliography: | 122 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.29.0.175.0 |