股関節外転運動の肢位による筋活動の違い

【目的】 股関節疾患の患者に対する中殿筋の重要性は多く報告されており、多様な訓練方法が知られている。また、股関節を構成する骨形態の男女差に関する報告も多い。本研究の目的は、股関節外転運動を行う際の運動肢位や男女間の差異を明確にすることである。 【方法】 対象は健常成人30名(平均年齢:28.0±5.9歳、男性:18名、女性:12名)であった。筋電図の測定には、下野らの方法を参考に大殿筋(Gma)、中殿筋(Gme)、大腿筋膜張筋(TFL)に対し表面電極を貼付した。股関節外転運動は、A:背臥位股関節伸展0°、B:背臥位股関節屈曲位、C:側臥位股関節伸展0°、D:側臥位股関節屈曲位の4肢位にて行った...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 330
Main Authors 岩崎, 翼, 宮本, 梓, 福田, 潤, 加藤, 啓祐, 宇良田, 大悟, 坂本, 直文, 新井, 真奈美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.330.0

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Summary:【目的】 股関節疾患の患者に対する中殿筋の重要性は多く報告されており、多様な訓練方法が知られている。また、股関節を構成する骨形態の男女差に関する報告も多い。本研究の目的は、股関節外転運動を行う際の運動肢位や男女間の差異を明確にすることである。 【方法】 対象は健常成人30名(平均年齢:28.0±5.9歳、男性:18名、女性:12名)であった。筋電図の測定には、下野らの方法を参考に大殿筋(Gma)、中殿筋(Gme)、大腿筋膜張筋(TFL)に対し表面電極を貼付した。股関節外転運動は、A:背臥位股関節伸展0°、B:背臥位股関節屈曲位、C:側臥位股関節伸展0°、D:側臥位股関節屈曲位の4肢位にて行った。屈曲角度は対馬らの報告を参考に中殿筋の活動が最大となる20°とした。負荷は、50cmのセラバンド(黒)を大腿遠位に巻き、外転30°で5秒間保持させ、得られた筋電図波形の安定した中央3秒間を採用した。各々の筋電図生波形から積分値を算出し、Aの積分値を100%としてBからDを正規化した。Tukey-Kramer法を用いて多重比較検定を行った。 【結果】 全被検者のGmeは、D(373%)はA(100%)より有意に高い筋活動を認めた(P=0.02)。TFLは、C(255%)はB(88%)・D(123%)より有意に高い筋活動を認めた(P=0.01)。Gmaは有意差を認めなかった。男女別での比較は、男性ではTFLにおいてC(281%)はA(100%)・D(90%)より有意に高い筋活動を認めた(P=0.01)。以外の筋は有意差を認めなかった。また、男女間では全ての筋において有意差を認めなかった。 【考察】 全体の結果より、Gmeの訓練肢位は、Dが有効であると認めた。有意差を認めた肢位はDとAでは、側臥位になることで下肢の重量が負荷となり、さらに屈曲位により大腿骨の外旋作用が加わるため、Gmeの作用が高まると考えられた。TFLの訓練肢位は、Cが有効であると認めた。Bと比べCでは、Gme 同様下肢の重量が負荷となる。Dと比べCでは、下腿も負荷に加わりモーメントアームが延長されるため、より遠位に付着部をもつTFLの活動が高まると考えられた。男女間の結果をみると、男性のTFL の筋活動は有意差を認めたため、肢位によって選択的に訓練する、もしくは関与を除くことが可能であると考えられた。女性では、有意差が認められず全ての肢位においてTFLの関与が考えられ、選択的に訓練することは困難であると考えられた。
Bibliography:PF2-7-049
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.330.0