意欲の有無が転帰先におよぼす影響

【目的】  一般的に意欲が高く、自ら介入に対して積極的に取り組む場合は回復が良いことは容易に想像がつく。そこで後ろ向きのコホート調査として理学療法を実施した対象者を調査し、意欲の有無が転帰先に関係するか分析、検討・考察した。今後、理学療法を実施するうえでの予後・転帰先予測および目標設定の一指針となるのではないかと考え報告する。 【方法】  当院、リハビリテーション部理学療法部門にて平成17年2月~平成22年2月までの期間、理学療法を実施した入院患者、155名(男性79名、女性76名、平均年齢73.6±14.9歳)を対象とし、整形外科疾患群、中枢性疾患群、廃用症候群の3群に分類。疾患群ごとに転帰...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 249
Main Author 倉持, 正一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.249.0

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Summary:【目的】  一般的に意欲が高く、自ら介入に対して積極的に取り組む場合は回復が良いことは容易に想像がつく。そこで後ろ向きのコホート調査として理学療法を実施した対象者を調査し、意欲の有無が転帰先に関係するか分析、検討・考察した。今後、理学療法を実施するうえでの予後・転帰先予測および目標設定の一指針となるのではないかと考え報告する。 【方法】  当院、リハビリテーション部理学療法部門にて平成17年2月~平成22年2月までの期間、理学療法を実施した入院患者、155名(男性79名、女性76名、平均年齢73.6±14.9歳)を対象とし、整形外科疾患群、中枢性疾患群、廃用症候群の3群に分類。疾患群ごとに転帰先を自宅退院群、転院群、その他の3群に分けた。各群で精神機能良好で意欲ありとそうでないに分類した。 各群に分類した結果を有意水準5%(p<0.05)としてX2検定を実施し有意差を検定した。倫理的な配慮として情報収集は診療録から行い、個人を特定できるような情報は収集しないようにした。 【結果】  整形外科疾患群47名、中枢性疾患群43名、廃用症候群65名となった。全体で自宅退院群68名、転院群51名、その他36名で自宅退院率としては43.9%であった。整形外科疾患群で自宅退院が31名、転院は16名。対して中枢性疾患群が自宅退院は12名、転院が22名となった。廃用症候群ではその他が27名と自宅退院25名より多く、3群間でも最も多い結果となった。(p<0.05)  疾患群ごとの転帰先と意欲の関係の統計学的解析では、整形外科疾患群と廃用症候群では有意差ありとなった。(p<0.05)中枢性疾患群では有意な差はみられない(p≒0.068)という結果となった。 【考察】  整形外科疾患群、廃用症候群では筋力低下が主要な問題として抽出されることが多いためではないかと考えた。意欲が高いものほど適切および自主的に運動をするため機能障害が改善され、自宅退院率が高くなったのではないかと考える。中枢性疾患群では有意な差が生じなかった。その理由として(1)麻痺や感覚障害、協調性などが問題となることが多い。(2)高次脳機能障害や認知症を有する場合があり問題が複雑化する。(3)家族の受け入れの問題など環境による因子がある。(4)内科的疾患などを合併していることが多い。以上のことから有意差がなかったのではないかと考えた。 【まとめ】  整形外科疾患と廃用症候群では意欲を把握することが転帰先・予後予測をするための一つの指針として活用できると考える。対して中枢性疾患群に関しては、種々の問題に対して「チームアプローチ」が転帰先を良い方向へ導くためにはより重要であると示されたのではないかと考える。
Bibliography:P2-14-135
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.249.0