炎症とマスト細胞の活性
マスト細胞活性化に伴うメディエーター遊離過程は一連のchain reactionである. すなわち, マスト細胞表面における抗原抗体反応によりIgEレセプターのcross linking1)が生じ, 細胞内生化学的機構を介し, マスト細胞顆粒膜間の, あるいは細胞膜と顆粒膜との融合の結果, 顆粒が脱出する. 図1は, 正常および活性化ラット腹腔マスト細胞の電顕像であるが, 下2枚の写真は脱顆粒を示唆する所見とも思われる. 一方, 図2は, ヒト肺マスト細胞の抗原刺激に伴う形態学的変化の電顕像の模式図を示すが, ヒト肺マスト細胞には約100個の均一た形態を示す顆粒が存在し, 抗原刺激により活性化...
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Published in | 炎症 Vol. 11; no. 6; pp. 539 - 549 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本炎症・再生医学会
1991
日本炎症学会 |
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ISSN | 0389-4290 1884-4006 |
DOI | 10.2492/jsir1981.11.539 |
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Summary: | マスト細胞活性化に伴うメディエーター遊離過程は一連のchain reactionである. すなわち, マスト細胞表面における抗原抗体反応によりIgEレセプターのcross linking1)が生じ, 細胞内生化学的機構を介し, マスト細胞顆粒膜間の, あるいは細胞膜と顆粒膜との融合の結果, 顆粒が脱出する. 図1は, 正常および活性化ラット腹腔マスト細胞の電顕像であるが, 下2枚の写真は脱顆粒を示唆する所見とも思われる. 一方, 図2は, ヒト肺マスト細胞の抗原刺激に伴う形態学的変化の電顕像の模式図を示すが, ヒト肺マスト細胞には約100個の均一た形態を示す顆粒が存在し, 抗原刺激により活性化されると, 顆粒は渦巻状を呈し(図2bの拡大部分), 約15分後には原形質の大部分が融解して空胞を形成する. 電顕的には均一な顆粒形態を示すlipid bodyとして認められるが, 抗原刺激30分後にも典型的な顆粒はみられず, 依然lipid bodyが認められる2). 脱顆粒に伴い, 細胞内顆粒に存在するprefbrmed mediatorと, 細胞が刺激されてはじめて生成されるnewly generated mediatorが遊離し(表1), 多彩な炎症を惹起する. その一例として, 表2は気管支喘息の病態とそれに関与するメディエーターを対比してまとめたものであるが, マスト細胞から遊離するメディエーターが, 気管支喘息の病態形成に深く係わることがわかる. |
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ISSN: | 0389-4290 1884-4006 |
DOI: | 10.2492/jsir1981.11.539 |