変形性膝関節症患者に対するpatella mobilizationが膝伸展筋力に及ぼす影響について
【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)を呈する患者において、膝蓋骨可動性の低下を臨床で経験する。膝蓋骨は、炎症・腫脹等により滑液嚢が癒着することで容易に可動性が低下し、膝蓋骨の可動性低下が、大腿四頭筋の筋力効率を低下させる原因と成り得るという報告はあるものの、膝蓋骨の可動性改善が膝伸展筋力に及ぼす影響について論じた報告は見受けられない。そこで今回我々は、健常者に対してpatella mobilizationを施術した場合と、膝OA患者に対して施術した場合の前後で、等尺性膝伸展筋力の変化を比較し検証した。【方法】対象は、健常成人男性8名(8膝)をControl群、当院で保存療法を受けている膝OA患...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 154 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.154.0 |
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Summary: | 【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)を呈する患者において、膝蓋骨可動性の低下を臨床で経験する。膝蓋骨は、炎症・腫脹等により滑液嚢が癒着することで容易に可動性が低下し、膝蓋骨の可動性低下が、大腿四頭筋の筋力効率を低下させる原因と成り得るという報告はあるものの、膝蓋骨の可動性改善が膝伸展筋力に及ぼす影響について論じた報告は見受けられない。そこで今回我々は、健常者に対してpatella mobilizationを施術した場合と、膝OA患者に対して施術した場合の前後で、等尺性膝伸展筋力の変化を比較し検証した。【方法】対象は、健常成人男性8名(8膝)をControl群、当院で保存療法を受けている膝OA患者11名(11膝)をOA群とした。両群にて、1分間のpatella mobilizationの前後で、膝伸展筋力を測定した。patella mobilizationの実施条件として、高柳らの報告に準拠し、背臥位(膝関節30°屈曲位)で、膝蓋骨を両手で包み、上下左右に動かし、1分間同一の施術者で行った。膝伸展筋力の測定条件は、端坐位にて、足関節前面に徒手筋力計(アニマ社製μTas F-1)を配置し、各3回測定して、その中央値を代表値とした。得られた筋力値は、膝裂隙から作用点までの距離を乗じ、体重を除して正規化した。分析は、両群の効果判定のためマンホイットニー順位和検定を用いた。なお、本研究は貢川整形外科病院倫理委員会の承認のもと実施した。【結果】Control群の膝伸展筋力の前後差の平均は、2.82Ncm/kgであった。OA群の前後差の平均は、0.89Ncm/kgであった。統計の結果、Control群に有意差を認めたが、OA群では有意差が認めなかった。【考察】今回の結果より、Control群においてpatella mobilization前後での等尺性膝伸展筋力に有意差を認めたが、OA群は僅かに改善されてはいたが、統計の結果、有意差を認めなかった。これは、Control群に比較し、膝OA群の方が膝蓋骨の可動性が低下しているため、同条件下では、patella mobilizationの効果が十分得られず、膝伸展筋力に影響を及ぼすに至らない可能性が示唆された。また、膝OA群では若干の改善が見られたことから、patella mobilizationを筋力訓練の前に行うことで、より効率的な筋力増強訓練を実施できるものと考えられる。【まとめ】本研究において、膝OA患者に対するpatella mobilizationでは、膝伸展筋力との相関性は認められなかった。今後さらに施術・測定条件を変えて、膝蓋骨の可動性が膝伸展筋力に及ぼす影響について、検討していきたい。 |
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Bibliography: | 24 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.29.0.154.0 |