在宅におけるパーキンソン病患者の下肢筋力の経時的変化について

【目的】 訪問リハビリ(以下訪問リハ)では,脳血管障害や大腿骨頸部骨折患者だけでなくパーキンソン病(以下PD)などの退行変性疾患患者も多い.PD患者の歩行と下肢筋力における報告では調査期間が2~16週と短期間である. PD患者でも自立歩行の維持は,日常生活や生活の質を維持するうえで非常に重要である.そこで今回,PD患者の自宅歩行と下肢筋力を継続的に調査し若干の知見が得られたので報告する. 【方法】 対象は本研究に同意が得られ,平成21年7月~平成22年10月に訪問リハを実施したPD患者10例のうち自宅歩行が自立の3例(男性2名,女性1名,平均年齢83±6.4歳)とした.介入開始時に計測したもの...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 182
Main Authors 久保, 雅昭, 池田, 雅名, 小泉, 周也, 鈴木, 文子, 宮川, 俊宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.182.0

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Summary:【目的】 訪問リハビリ(以下訪問リハ)では,脳血管障害や大腿骨頸部骨折患者だけでなくパーキンソン病(以下PD)などの退行変性疾患患者も多い.PD患者の歩行と下肢筋力における報告では調査期間が2~16週と短期間である. PD患者でも自立歩行の維持は,日常生活や生活の質を維持するうえで非常に重要である.そこで今回,PD患者の自宅歩行と下肢筋力を継続的に調査し若干の知見が得られたので報告する. 【方法】 対象は本研究に同意が得られ,平成21年7月~平成22年10月に訪問リハを実施したPD患者10例のうち自宅歩行が自立の3例(男性2名,女性1名,平均年齢83±6.4歳)とした.介入開始時に計測したものを1回目,介入約1年後を2回目とし比較検討した. 方法は対象者の膝伸展筋力をアニマ社製μTasF-1を使用し,坐位下腿下垂位での等尺性筋力を3回測定し,その平均値を体重で除した値を体重比として求めた.また計測期間中のFIMも調査した.統計学的検討は,T検定を用い危険率5%とした. 対象者及びその家族には本研究の目的,個人情報の使用方法を書面にて説明し,また同意を強制するものではないことも説明した. 【結果】 平均計測実施期間13±2.5カ月,Hoehn&Yahrの重症度分類(以下Yahr)はII~IVで期間中に変化はなかった.筋力の体重比平均値は1回目0.22±0%,2回目0.3±0.1%で有意差はなかった. FIMの平均値は1回目93±10.0点,2回目92.0±10.7点で有意差はなかった.FIMの減点項目は排泄コントロールだった. 【考察】 今回の結果から筋力に有意差はなかったが,増強傾向が見られた.またFIMの減点は排泄コントロールであり,移動で変化はなかった.このことから訪問リハの介入が下肢筋力および歩行能力の維持に貢献できていたことが示唆される. 先行研究では対象がYahrII~III,訓練期間が4~16週では日常生活活動と歩行に改善が見られ,歩行のみ改善が見られたのは訓練期間が2週だった.また,千田は運動行動の改善が必ずしも神経徴候の改善によるものとは言い切れず,運動療法の効果は持続しない(6カ月程度)と述べている.よって,在宅生活を続けるにあたり工夫した筋力増強訓練や環境設定,家族指導などを含めた包括的なリハビリテーションの介入が必要と思われる. 【まとめ】 PDなど退行変性疾患患者に6カ月以上の継続したリハビリを医療保険下で行うのは難しいが,介護保険下である訪問リハでは継続かつ日常生活に密着したリハビリを提供できるため訪問リハの有用性がうかがえる.
Bibliography:P1-7-068
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.182.0