濃厚な家族歴を有し,ランニング中心室細動を発症した若年性肥大型心筋症の1例
症例は14歳,女性.父と姉が肥大型心筋症(HCM)を指摘されている.8歳時に心電図異常(不完全右脚ブロック,下壁・側壁の異常Q波)のため,心臓超音波検査を施行されたが,異常所見は認められなかった.その後,なんら胸部症状を自覚することはなかったが,2011年体育の授業でランニング中に心肺停止となった.直ちに心肺蘇生術が開始され,学校に設置されている自動体外式除細動器(AED)で心室細動が確認され除細動に成功した.搬送先での心臓超音波検査上,左室前壁中隔の非対称性肥大(中隔15mm,後壁9mm)を認めた.低体温療法により脳神経学的には完全に回復し,精査加療目的で当院に転院となった.冠動脈造影では有...
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Published in | 心臓 Vol. 44; no. SUPPL.2; pp. S2_122 - S2_127 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.44.S2_122 |
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Summary: | 症例は14歳,女性.父と姉が肥大型心筋症(HCM)を指摘されている.8歳時に心電図異常(不完全右脚ブロック,下壁・側壁の異常Q波)のため,心臓超音波検査を施行されたが,異常所見は認められなかった.その後,なんら胸部症状を自覚することはなかったが,2011年体育の授業でランニング中に心肺停止となった.直ちに心肺蘇生術が開始され,学校に設置されている自動体外式除細動器(AED)で心室細動が確認され除細動に成功した.搬送先での心臓超音波検査上,左室前壁中隔の非対称性肥大(中隔15mm,後壁9mm)を認めた.低体温療法により脳神経学的には完全に回復し,精査加療目的で当院に転院となった.冠動脈造影では有意狭窄は認めず,心臓MRIでは中隔に遅延造影像を呈した.心筋生検では中等度の心筋錯綜配列と心筋肥大を認め,HCMと確定診断した.β遮断薬の服用開始および植込み型除細動器(ICD)植え込み術後の運動負荷試験では心室細動は認めず退院,外来観察となった.濃厚な家族歴を有し,運動誘発性の心室細動を発症した若年肥大型心筋症と考えられた. HCM患者における若年死亡の主な原因としては,心室不整脈があげられる.心臓突然死予防のためにはICD植え込みが必要であるが,植え込みによる合併症やQOLの低下も少なくないため適応には慎重な検討を要する.家族歴を有する若年者でのHCMについて,そのガイドラインなど文献的検討を含めて考察した. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.44.S2_122 |