細胞遺伝学的手法による膀胱腫瘍診断の試み

膀胱腫瘍の既往はあるが内視鏡上明らかな腫瘍を認めない11例中6例の尿中剥離細胞中に分裂中期細胞を認め, いずれも異数性細胞であった. 6例中3例は病理組織学的に腫瘍と診断された. 内視鏡的に非乳頭状隆起性病変を認めた10例中7例の尿中剥離細胞中に分裂中期細胞を認め, いずれも異数性細胞であった. この7例はすべて病理組織学的にも腫瘍と診断された. 又他の3例はすべて病理組織学的に非腫瘍性疾患であった. 染色体観察は直接法又は短期培養法により行ない, ギムザ染色, Q分染法の連続観察を行なった. Q分染法は4例 (31%) に可能であり, いずれも複雑な核型変化が認められた. 以上より尿中剥離腫...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 78; no. 8; pp. 1409 - 1416
Main Authors 三橋, 裕行, 丸, 彰夫, 小柳, 知彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1987
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Summary:膀胱腫瘍の既往はあるが内視鏡上明らかな腫瘍を認めない11例中6例の尿中剥離細胞中に分裂中期細胞を認め, いずれも異数性細胞であった. 6例中3例は病理組織学的に腫瘍と診断された. 内視鏡的に非乳頭状隆起性病変を認めた10例中7例の尿中剥離細胞中に分裂中期細胞を認め, いずれも異数性細胞であった. この7例はすべて病理組織学的にも腫瘍と診断された. 又他の3例はすべて病理組織学的に非腫瘍性疾患であった. 染色体観察は直接法又は短期培養法により行ない, ギムザ染色, Q分染法の連続観察を行なった. Q分染法は4例 (31%) に可能であり, いずれも複雑な核型変化が認められた. 以上より尿中剥離腫瘍細胞の染色体観察が膀胱腫瘍の診断, 特に preclinical stage での診断に有用であることと, 剥離腫瘍細胞を用いてもある程度の染色体核型分析が可能であることが示唆された.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.78.8_1409