経尿道的前立腺切除術の臨床的検討

前立腺肥大症の手術法としての経尿道的切除術 (TURP) の地位は定着したが, 手術法の選択は術者の好みに左右され, その適応基準は明示されていない. そこで, われわれが, 1976年1月より1983年12月までの8年間に手術を行った159例の前立腺肥大症をTURP (T群) 121例, 125回と open sargery (O群) 38例に分け, 術後の血尿期間, カテーテル留置期間, 入院期間, 合併症などを成績の指標として, 比較検討した. 次いで, TURP症例について, 術前の留置カテーテル, 膿尿, 高窒素血症, 貧血, 年齢, 手術時間, 切除組織重量などを上記成績の指標と関...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 8; pp. 1300 - 1309
Main Authors 工藤, 潔, 木村, 光隆, 松原, 正典, 諏訪, 純二, 三村, 晴夫, 松山, 恭輔, 青柳, 直大, 宍戸, 悟, 千野, 武裕, 千野, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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Summary:前立腺肥大症の手術法としての経尿道的切除術 (TURP) の地位は定着したが, 手術法の選択は術者の好みに左右され, その適応基準は明示されていない. そこで, われわれが, 1976年1月より1983年12月までの8年間に手術を行った159例の前立腺肥大症をTURP (T群) 121例, 125回と open sargery (O群) 38例に分け, 術後の血尿期間, カテーテル留置期間, 入院期間, 合併症などを成績の指標として, 比較検討した. 次いで, TURP症例について, 術前の留置カテーテル, 膿尿, 高窒素血症, 貧血, 年齢, 手術時間, 切除組織重量などを上記成績の指標と関連させ, 検討した. その結果は以下の如くであった. 1) T群とO群の術後の血尿期間, カテーテル留置期間, 入院期間, そして合併症の頻度は各, 2.1日対5.7日, 4.3日対10.7日, 15.4日対25.5日そして28%対31.6%であり, 何れもT群が優っていた. 2)T群では手術時間と切除量の間に正の相関関係がみられたが, O群では関連性みられず, 切除率は各, 0.23g/min, 0.31g/minであった. しかし, 切除量40g以下では各, 0.23g/min, 0.20g/minとなり, T群がO群に優る傾向を示した. 3) TUR症例の検討から, 術前の留置カテーテル, 膿尿の存在, 80歳以上の高齢患者では, 成績不良となる傾向がみられた. 4) TURの手術時間, 切除量は患者の年齢と平行関係にあり, 手術時間の延長, 切除量の増加にしたがって, 手術成績の不良となる傾向が示された. 結論として, 安定したTURを行うために, 排尿障害発症後は早期に手術を考慮し, 腺腫50g以下の症例を適応とし, 2時間の手術時間を順守することが肝要と思われた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.8_1300