顎裂部骨移植術と鼻腔内所見
顎裂部骨移植術および本手術と同時に行う下鼻甲介切除が口唇裂・口蓋裂患者の鼻腔に与える影響を明らかにするために,佐久総合病院歯科口腔外科にて顎裂への二次的骨移植術を施行した13例に対し,術前と術後5~6か月時に,下,鼻甲介粘膜生検と鼻腔内視鏡検査を行った.その結果は以下の如くであった. 1)鼻口腔痩の大きさと下鼻甲介粘膜の炎症の強さの間には関連は認められなかった. 2)裂型と下鼻甲介粘膜の炎症の強さとの間にも関連は認められなかった. 3)術前の下鼻甲介粘膜の炎症が強いほど下鼻甲介切除の頻度が増加していた.すなわち,鼻腔底形成に際し下鼻甲介が障害となった症例で下鼻甲介粘膜の炎症が強い傾向にあった....
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 24; no. 3; pp. 292 - 298 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
1999
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Subjects | |
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ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.24.3_292 |
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Summary: | 顎裂部骨移植術および本手術と同時に行う下鼻甲介切除が口唇裂・口蓋裂患者の鼻腔に与える影響を明らかにするために,佐久総合病院歯科口腔外科にて顎裂への二次的骨移植術を施行した13例に対し,術前と術後5~6か月時に,下,鼻甲介粘膜生検と鼻腔内視鏡検査を行った.その結果は以下の如くであった. 1)鼻口腔痩の大きさと下鼻甲介粘膜の炎症の強さの間には関連は認められなかった. 2)裂型と下鼻甲介粘膜の炎症の強さとの間にも関連は認められなかった. 3)術前の下鼻甲介粘膜の炎症が強いほど下鼻甲介切除の頻度が増加していた.すなわち,鼻腔底形成に際し下鼻甲介が障害となった症例で下鼻甲介粘膜の炎症が強い傾向にあった. 4)下鼻甲介切除群および非切除群ともに顎裂部骨移植術後の下鼻甲介粘膜の炎症は軽減する傾向が認められた. 5)鼻腔内視鏡所見では,術後の鼻腔内形態で異常と考えられる所見は認められなかった. 以上の結果より,口唇裂・口蓋裂患者の下鼻甲介の形態および鼻腔粘膜炎症には顎裂の形態が少なからず関与している可能性が示唆された.また,顎裂部骨移植術によって鼻腔底を再建することにより鼻腔粘膜の炎症は改善する傾向にあること,本手術と同時に施行する下鼻甲介切除は鼻腔粘膜病変および鼻腔形態に悪影響を及ぼすことなく,より正常に近い形で鼻腔底を再建する術式として有効であることが示唆された. |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.24.3_292 |