初回松葉杖歩行指導における歩行の安定性と握力の関係について

【目的】 当院は150床の急性期を中心とした病院であり、整形外科患者には歩行獲得のため、受傷後直ちに松葉杖歩行の指導を行う場合が多い。先行研究より、松葉杖歩行の不安定性は60歳代から急激に上昇し、荷重量に関係なく不安定性が出現する傾向があることが言われている。今回、簡便で全身筋力の指標となるとされている握力と松葉杖歩行の安定性の関係について検討したのでここに報告する。 【対象】 平成22年4月より平成23年3月にかけて当院リハビリテーション科にて松葉杖歩行の指導を行った患者62症例(平均年齢40.0±22.3歳、男性41名、女性21名)とした。 【方法】 実施の流れとしては、まずセラピストが松...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 39
Main Authors 渡邉, 浩文, 北村, 美咲, 瀧口, 江理, 小野, 美奈
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.39.0

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Summary:【目的】 当院は150床の急性期を中心とした病院であり、整形外科患者には歩行獲得のため、受傷後直ちに松葉杖歩行の指導を行う場合が多い。先行研究より、松葉杖歩行の不安定性は60歳代から急激に上昇し、荷重量に関係なく不安定性が出現する傾向があることが言われている。今回、簡便で全身筋力の指標となるとされている握力と松葉杖歩行の安定性の関係について検討したのでここに報告する。 【対象】 平成22年4月より平成23年3月にかけて当院リハビリテーション科にて松葉杖歩行の指導を行った患者62症例(平均年齢40.0±22.3歳、男性41名、女性21名)とした。 【方法】 実施の流れとしては、まずセラピストが松葉杖歩行指導問診票に記入し、握力を左右各2回ずつ測定、最後に松葉杖歩行指導を行った。握力の各年齢における平均値と安定性のデータを使用し、安定性の違いの有無をX〈SUP〉2〈/SUP〉検定を用いて検討した。不安定と判断した基準として、見守りまたは介助が必要な症例とした。松葉杖歩行指導時の肘関節の角度は、軽度屈曲位または伸展位で行うこととした。 また、ここで使用される情報についてはヘルシンキ宣言に基づいて行った。 【結果】 握力と安定性の関係においては有意差が認められなかった(p<0.05)。また、男女別や年代別の安定性においても有意差は認められなかった(p<0.05)。松葉杖歩行時の肘関節の角度に関しては、軽度屈曲位で指導した際に不安定とされた症例に対して肘伸展位で指導した場合、安定性が向上する傾向がみられた。 【考察】 全身筋力の指標となるとされている握力が年齢平均以上であれば松葉杖歩行の安定性が増すとの仮説を立てていた。しかし、今回の調査では握力に関係なく不安定性が出現していた。このことから、握力があっても松葉杖歩行が安定するとは限らないといえる。これは、松葉杖歩行の安定性を増すためには筋力以外の要素も関与しており、これらの要素も視野に入れる必要があるのではないかと考える。また、松葉杖歩行時に肘関節軽度屈曲位で不安定な症例が肘伸展位で安定する傾向がみられた点は、肘伸展位にすることで骨性の支持が得られたことが要因ではないかと考える。 【まとめ】 今回は初回松葉杖歩行指導における握力と安定性の調査を行った。今後、不安定性が出ている原因について、バランス能力に関与している筋力以外の要素についても調査し、更に研究していく事を今後の課題としたい。
Bibliography:O1-7-039
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.39.0