理学療法士による新しい訓練用下腿義足作製方法の試み

【はじめに】当院では,訓練用義足を理学療法士によって作製している.しかし,内部疾患により断端に感覚障害を合併している症例では,僅かなソケット適合不良でも断端に水疱や擦過傷を形成してしまうため,熟練したソケット作製技術が必要となっている.【目的】比較的容易な手法で訓練用TSBソケットを作製できる方法を紹介するとともに,その有効性について検討する.【新しいTSB式ソケット作製方法の紹介】採型には,サーモプラスチック(熱可塑性樹脂),シリコンライナー,ラップ(5層構造),ストッキングを用いる.採型は,予めサーモプラスチックを筒状に成型し加熱する.シリコンライナーを装着し,ラップで断端の形状を整え,筒...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 82
Main Authors 宮城, 新吾, 寺村, 誠治, 吉葉, 崇, 冨手, 恭子, 田中, 惣治, 大西, 徹也, 原, 和彦, 石倉, 祐二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
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Summary:【はじめに】当院では,訓練用義足を理学療法士によって作製している.しかし,内部疾患により断端に感覚障害を合併している症例では,僅かなソケット適合不良でも断端に水疱や擦過傷を形成してしまうため,熟練したソケット作製技術が必要となっている.【目的】比較的容易な手法で訓練用TSBソケットを作製できる方法を紹介するとともに,その有効性について検討する.【新しいTSB式ソケット作製方法の紹介】採型には,サーモプラスチック(熱可塑性樹脂),シリコンライナー,ラップ(5層構造),ストッキングを用いる.採型は,予めサーモプラスチックを筒状に成型し加熱する.シリコンライナーを装着し,ラップで断端の形状を整え,筒状のサーモプラスチックを被せ,ラップで適度な圧を加える.サーモプラスチックが冷めて硬化したことを確認し,断端から外し,トリミングを行い完成となる.従来の作製方法との大きな変更点は,ソケットの形状をラップを用いて作り出す点である.【方法】 対象は,平成21年5月以降に当院で訓練用下腿義足を作製した症例9例.本学会にて報告することに同意の得られた症例とした.内訳は男性8例,女性1例,両側下腿切断1例,片側下腿切断8例であった.平均年齢は52.2歳±9.9歳で切断原因は全例で糖尿病性壊疽による下腿切断であった. 作製者は,切断症例を担当しておらず,且つ義足作製経験のない当院の経験年数3年未満の理学療法士によって新しいTSB式ソケット作製方法を実施し,傷の有無,歩行時杖使用の有無,採型から断端荷重練習開始までの所要時間を測定した.【結果】断端に傷を形成した症例は0例,退院時に杖を必要とした症例は1例(両側下腿切断),採型から断端荷重練習開始までの所要時間は平均約120分程度であった.【考察】結果より,新しい作製方法は安全であり,採型から短時間で断端荷重練習を開始することが可能で,義足歩行を円滑に獲得させる手段の一つであることが示唆された.新しい作製方法の利点として,特別な作製技術を要さないことで比較的容易に作製可能.作製にラップを用いることで断端全体に適切な圧がかかり傷を形成する可能性が低いこと.また,日々変化する断端に対応するためのソケット修正が容易であることが挙げられる.これらより,新しい作製方法は患者側・作製者側の双方にメリットがあり,時間的な制約が多い現代に合った作製方法であると考える.【まとめ】 新しいTSB式ソケット作製方法は安全性が高く,且つ経験の浅い理学療法士でも作製可能な方法であり,早期に円滑な義足歩行を獲得するための有効な手段の一つである.
Bibliography:121
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.82.0