廃用症候群に対する理学療法

【目的】当院リハビリテーション科理学療法部門は、疾患の急性期に対応する総合病院に属し、取り扱い患者数も約60%を中枢神経疾患が占めている。一方、内科からの理学療法依頼件数も約10%と意外に多く、廃用症候群として理学療法の処方が出ることも多い。 今回は、これらの症例の理学療法実施状況と移動能力の変化を調査したので、ここに報告する。 【方法】平成16年度中に内科依頼でリハ処方が出た症例のうち、リハ科医師の処方箋に「廃用症候群」あるいは「廃用」などと記載のある86例を対象とした。その内訳は、男性62例、女性24例、平均年齢79.4±9.6歳であった。移動能力の変化は、Barthel Index(以下...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 26; p. 59
Main Authors 武内, 伸浩, 尾花, 正義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.26.0.59.0

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Summary:【目的】当院リハビリテーション科理学療法部門は、疾患の急性期に対応する総合病院に属し、取り扱い患者数も約60%を中枢神経疾患が占めている。一方、内科からの理学療法依頼件数も約10%と意外に多く、廃用症候群として理学療法の処方が出ることも多い。 今回は、これらの症例の理学療法実施状況と移動能力の変化を調査したので、ここに報告する。 【方法】平成16年度中に内科依頼でリハ処方が出た症例のうち、リハ科医師の処方箋に「廃用症候群」あるいは「廃用」などと記載のある86例を対象とした。その内訳は、男性62例、女性24例、平均年齢79.4±9.6歳であった。移動能力の変化は、Barthel Index(以下BI)の移乗と歩行の項目を用いた。調査は、当院理学療法部門の退院・終了時報告書、診療録から情報収集した。 【結果】対象患者の平均入院期間は62.8±49.9日であり、平均理学療法実施期間は37.8日(中央値23日)であった。 また、転帰が自宅退院の48例と、他院に転院の19例では、入院期間は自宅49.3±34.4日、転院78.8±44.3日、理学療法実施期間は自宅24.8±23.9日、転院59.2±44.6日と有意な差が認められた(マン・ホイットニ検定p<0.01)。 さらに、移乗BI、歩行BIの変化は、一部低下した例を除いて全体的に維持、改善が見られた。自宅退院では、移乗BI変化の平均は+2.4、歩行BI変化の平均は+2.6であった。一方転院では、移乗BI変化の平均は+1.3、歩行BI変化の平均は+1.8であった。 【考察】対象症例の転帰では、半数以上が1ヶ月弱前後の理学療法実施期間を経て自宅退院となり、比較的短期間でゴールに結びつけられ、理学療法の効果があったと考える。また、転院例では、理学療法実施期間が2ヶ月前後と日数もかかり、理学療法実施前後で改善があったとしても家族の介護力も含め家庭復帰に到るまでには改善せず、自宅退院できなかったと考えられる。 廃用症候群に限らず実際の臨床場面では、効果が現れにくい症例や、改善が困難と思われる症例に遭遇することがよくある。そのような症例では、入院期間・理学療法実施期間も長期化しやすく、当院のような急性期対象の病院で理学療法を継続して実施するには、実施頻度などを再検討する必要があると考える。 今後、改善が困難な症例に共通する問題点を調査するとともに、今回のデータも利用し、廃用症候群の理学療法の適応性について簡便に評価しうるスケールを試作していきたい。 【まとめ】(1)廃用症候群のリハ処方が出た症例で、入院期間、理学療法実施期間、移動能力の変化を調査した。 (2)自宅退院の症例を中心に理学療法の効果を認めたが、今後適応性を判断する必要性を感じた。
Bibliography:59
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.59.0