日本における生命保険売買の法的可能性

経済的にも苦しんでいる末期患者にとって,自身が保有する生命保険契約をいかに高価に換価できるかは重要な関心事である。現在の日本においては,簡易生命保険を除き,保険契約者変更における保険者承諾要件が障碍となって生命保険売買の途が閉ざされていると考えられているが,必ずしもそうではないと思われる。なぜなら,保険契約者変更手続に関して,約款に保険者承諾要件が規定されている場合には,当該条項に合理性が認められる範囲において保険者承諾の取り付けが必要となるが,モラル・リスクの可能性の増大は合理的な理由とはならないので,通常は保険者承諾が不要であり,保険者に対する単なる通知でよいと考える余地がある。また,引き...

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Published in保険学雑誌 Vol. 2015; no. 631; pp. 631_1 - 631_31
Main Authors 吉澤, 卓哉, 小坂, 雅人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本保険学会 2015
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ISSN0387-2939
2185-5064
DOI10.5609/jsis.2015.631_1

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Summary:経済的にも苦しんでいる末期患者にとって,自身が保有する生命保険契約をいかに高価に換価できるかは重要な関心事である。現在の日本においては,簡易生命保険を除き,保険契約者変更における保険者承諾要件が障碍となって生命保険売買の途が閉ざされていると考えられているが,必ずしもそうではないと思われる。なぜなら,保険契約者変更手続に関して,約款に保険者承諾要件が規定されている場合には,当該条項に合理性が認められる範囲において保険者承諾の取り付けが必要となるが,モラル・リスクの可能性の増大は合理的な理由とはならないので,通常は保険者承諾が不要であり,保険者に対する単なる通知でよいと考える余地がある。また,引き続いて保険金受取人変更手続が行われるが,約款に保険者承諾要件が規定されていなければ,保険者に対する単なる通知でよいからである。
ISSN:0387-2939
2185-5064
DOI:10.5609/jsis.2015.631_1