前十字靭帯再建術後早期からの脚伸展筋力の経時的変化

【はじめに】前十字靭帯(以下ACL)再建術後の筋力に関する報告は数多くあるが,術後早期では等尺性筋力の報告が僅かにあるのみで,等速性筋力に関しては少ない。一般的に競技復帰は術後6ヶ月前後で,筋力の復帰基準についてもある程度の共通認識が得られてきた。しかし,ランニングなど比較的早期から開始される動作についての客観的な筋力の開始基準はない。ペダル駆動型筋力測定器は術後早期から安全に筋力測定が可能であり,等速性膝伸展筋力との相関が高いことから,術後早期の筋力基準となり得ると考えられる。今回はACL再建術後1ヶ月からの等速性脚伸展筋力を測定し,経時的変化を検討した。 【対象】当院でACL再建術を実施し...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 25; p. 24
Main Authors 佐藤, 正裕, 加賀谷, 善教, 丸尾, 莉紗, 椎名, 美沙, 太附, 広明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2006
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.25.0.24.0

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Summary:【はじめに】前十字靭帯(以下ACL)再建術後の筋力に関する報告は数多くあるが,術後早期では等尺性筋力の報告が僅かにあるのみで,等速性筋力に関しては少ない。一般的に競技復帰は術後6ヶ月前後で,筋力の復帰基準についてもある程度の共通認識が得られてきた。しかし,ランニングなど比較的早期から開始される動作についての客観的な筋力の開始基準はない。ペダル駆動型筋力測定器は術後早期から安全に筋力測定が可能であり,等速性膝伸展筋力との相関が高いことから,術後早期の筋力基準となり得ると考えられる。今回はACL再建術後1ヶ月からの等速性脚伸展筋力を測定し,経時的変化を検討した。 【対象】当院でACL再建術を実施し,本研究の同意を得た14名(男性7名,女性7名,年齢23.0±9.2歳,身長165.8±6.6cm,体重62.6±9.9kg)で,術後1ヶ月の時点で疼痛なく自転車駆動が可能となったものとした。術側は右9名,左5名,術式は全例半腱様筋腱・薄筋腱を用いたSTG法であった。 【方法】脚伸展筋力はStrengthErgo.240(三菱電機社製)を用いた等速性筋力測定とし,回転数は60,100rpmとした。これは角速度180,300deg/secに相当する。両側5回ずつ測定し,ピークトルクを体重で除した体重比と,健側値で除した患健比を算出した。測定時期は術前および術後1~6ヶ月まで1ヶ月毎に行なった。統計学的手法はKruskal-Wallis検定とTukey-Kramer検定を使用して,各時期間の体重比ならびに患健比を比較した(P<0.05)。 【結果および考察】体重比では1ヶ月は60,100rpmともに術前,2~6ヶ月より有意に低値を示した(P<0.05)。患健比では1ヶ月は60rpmで術前,2~6ヵ月より有意に低値を示し,100rpmで術前,3~6ヵ月より有意に低値を示した(P<0.05)。しかし2ヶ月とは有意差を認めず,患健比では高速域で回復が遅延する傾向が示唆された。また,体重比,患健比の60,100rpmともに術前,2~6ヶ月間での有意差を認めず,ペダル駆動型筋力測定ではACL再建術後患者の脚伸展筋力は,体重比,患健比ともに術後2ヶ月で術前レベルまで改善することが示唆された。これは脚伸展動作が複合関節運動のため,参加筋が膝伸展筋だけではないことや,術後早期はCKCでの訓練が多用されることの影響が考えられる。脚伸展筋力は膝伸展筋力より動作との相関が高いことが報告されており,スポーツ動作の開始基準となり得るが,筋力の経時的な変化を評価する上では考慮が必要である。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.25.0.24.0