多職種介入によりADLの改善を認め、長期間再入院を予防できた拡張型心筋症の1例

【目的】 入退院を繰り返す拡張型心筋症例(DCM)に対し、多職種が関わる疾患管理プログラムを施行することでADLが向上し、その後長期経過観察中に一度も急性増悪を認めない症例を経験したので報告する。 【症例】 60歳代、女性。胸部x-pにて心胸郭比(CTR)70%、心エコーにて左室駆出率(LVEF)20%、左室拡張終期径(LVDd)66mmと著しい心拡大を認め、冠動脈造影で虚血病変を認めないためDCMと診断されている。夫、長女と3人暮らし。 【現病歴】 1996年ころより、他院にて不整脈と心拡大を指摘された。1999年胸部圧迫感と下腿浮腫出現あり他院受診を繰り返していた。2000年5月、労作時息...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 63
Main Authors 内山, 覚, 金丸, 晶子, 中原, 賢一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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Summary:【目的】 入退院を繰り返す拡張型心筋症例(DCM)に対し、多職種が関わる疾患管理プログラムを施行することでADLが向上し、その後長期経過観察中に一度も急性増悪を認めない症例を経験したので報告する。 【症例】 60歳代、女性。胸部x-pにて心胸郭比(CTR)70%、心エコーにて左室駆出率(LVEF)20%、左室拡張終期径(LVDd)66mmと著しい心拡大を認め、冠動脈造影で虚血病変を認めないためDCMと診断されている。夫、長女と3人暮らし。 【現病歴】 1996年ころより、他院にて不整脈と心拡大を指摘された。1999年胸部圧迫感と下腿浮腫出現あり他院受診を繰り返していた。2000年5月、労作時息切れと下腿浮腫にて当センター入院。入院時所見は、身長149.0cm、体重51.8kg、BMI22.9、心拍数90bpm(NSR)、血圧90/70mmHg、意識清明、貧血,黄疸、頸動脈拡張、両下肢に浮腫を認めた。BNP40.4pg/ml、CTR46%、LVDd67mm、LVEF22%、24時間心電図検査では総心拍数123,848bpmと頻脈傾向であった。自覚症状はNYHA3度であった。 【経過】 急性期治療後に、運動療法、栄養指導、服薬指導、医療カウンセリングを含む疾患管理プログラムを実施した。運動療法により運動機能の改善を認め、ADLは著しく向上した。退院時心肺運動負荷試験ではpeakVO2/Wは14.5ml/kg/minであった。栄養士、薬剤師の指導により推定塩分摂取量の減少、飲水料に関して良好な理解を得た。退院処方は、利尿薬、ジギタリス剤、アスパラギン酸カリウム、塩酸メキシチレンにて自宅退院し、その後外来でACEI、βblocker追加され現在に至っている。退院から約1年後の2001年5月の評価入院時には、BNP6.4pg/ml、CTR48%、LVDd60mm、LVEF30%、24hECG108,962bpm、peakVO2/W16.6ml/kg/minと、良好な心不全コントロール、心筋リバースリモデリング、運動耐容能改善を認め、日常生活の活動性も向上していた。その後10年経過観察を継続しているが、心不全増悪を認めず良好にコントロールされている。 【まとめ】 入退院を繰り返すDCM例に対し、多職種による疾患管理プログラムを実施した。運動耐容能改善、心筋のリバースリモデリングを認め、心不全の増悪に10年間良好な状態を維持している症例を報告した。疾患管理プログラムがセルフマネージメントを援助し、心不全増悪を予防できる可能性が示唆された。 【倫理的配慮】本発表に際して、対象者に臨床データの使用に関して説明し、書面で同意を得た。
Bibliography:O1-11-063
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.63.0