当院の車いす使用状況と身体能力との適合について
【目的】急性期病院である当院では早期離床が推奨され、食事や散歩などの目的で日中長時間車いすを使用することがあるが、多くは移動用の標準型車いすであり、適切な座位姿勢を確保するのはしばしば困難である。車いすの適合には、姿勢・移乗方法・駆動方法・使用目的の評価や、褥創予防を考慮したクッションの選択が必要である。しかし車いすは単なる移動手段としてとらえられやすく種類が単一で、座位姿勢の崩れの是正や移乗はスタッフのマンパワーに依存し、車いすの適合で自立度やADL改善を試みる取り組みがされてこなかった。そこで今回、当院における車いす利用者の身体能力、車いすの種類、使用目的などを調査し、現状把握と問題抽出を...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 26; p. 28 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2007
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.26.0.28.0 |
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Summary: | 【目的】急性期病院である当院では早期離床が推奨され、食事や散歩などの目的で日中長時間車いすを使用することがあるが、多くは移動用の標準型車いすであり、適切な座位姿勢を確保するのはしばしば困難である。車いすの適合には、姿勢・移乗方法・駆動方法・使用目的の評価や、褥創予防を考慮したクッションの選択が必要である。しかし車いすは単なる移動手段としてとらえられやすく種類が単一で、座位姿勢の崩れの是正や移乗はスタッフのマンパワーに依存し、車いすの適合で自立度やADL改善を試みる取り組みがされてこなかった。そこで今回、当院における車いす利用者の身体能力、車いすの種類、使用目的などを調査し、現状把握と問題抽出を行った。 【方法】対象は2007年1月9日~30日にリハビリテーション処方され、車いすを使用する入院患者で、研究の趣旨を説明し同意が得られた56名(男性29名、女性27名、平均年齢:68.6±15.9歳、平均在院日数:34.9±39.3日、依頼科:脳血管40%、整形外科30%、呼吸・循環器ほか30%)である。PTまたはOTがマットまたは車いすでの座位姿勢(股・膝関節90°、足関節0°で足底接地)の観察と、除圧の可否を評価した。使用目的を患者と看護師から、移乗方法・介助量(FIM)を看護師から聴取した。統計は百分率による分析と、SPSSver.12Jを用い、各項目間の関連についてカイ2乗検定を行った。 【結果】対象の約70%が移動以外の目的でも車いすを使用していた。座位非自立群(以下、非自立群)は全体の23%で、このうち約60%が標準型車いすを使用し、約85%でクッションを使用していなかった。座位移乗を行うものは約45%であった。カイ2乗検定から、座位能力と車いすの種類、クッションの有無には関連がなく、適切な選定が行われていない可能性が示唆された。座位能力とバックサポート機能、移乗方法とフットサポート等の機能では各々両群間に有意差を認め(<0.05)、座位能力や移乗方法により、車いすの各機能が選定されていることが示唆された。 【考察】座位保持に何らかの補助が必要な非自立群に対し、車いすの種類やクッションの選定が十分ではなかったが、バックサポートやフットサポート等の機能はおおむね患者に適合したものを選択していることが示唆された。車いすは移動以外の目的で使用されることが多く、特に非自立群が良好な座位姿勢を保持するためにはクッションの使用が必要である。また、半数近くが座位移乗群であることから、移乗自立度を改善し介助量軽減に有効な機能を備えた車いすが必要と思われた。 |
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Bibliography: | 28 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.26.0.28.0 |